これから始まる生活の
初めての友人は同じ名門育ちのお坊ちゃまでした。
「ここ、いいですか?空いているコンパートメントが見つからなくて……。」
一人でコンパートメントを占領し本を読んでいたところ、何となく見覚えのある少年が申し訳なさそうにドアを開けた。一緒に来た兄のカイルはグリフィンドールの監督生なので監督生専用のコンパートメントに向かったおかげで一人ぼっちだったのだ。
「どうぞ。こんなところでよければ。」
私は広げていた本を軽く片付け、彼の席を作った。少年は小さく「ありがとう」と呟くとぎこちなく席に座った。
「1年生?」
「あ、そうです」
「じゃあ一緒だ。私はラミア・セルウィン。君、ブラック家の次男でしょ?」
私の言葉に彼はビクッとして恐る恐る私を見る。そんなに怯えなくてもいいじゃないか。
「私のこと覚えてない?確か去年のパーティーで顔は合わせてると思うんだけど。」
魔法界の純血の中で毎年一度行われるパーティー。親を通して挨拶くらいはしているが、会話をするのはこれが初めてだ。
「セルウィン……。!! 思い出しました。確かお兄さんが今年6年生ですよね。」
「知ってるの?」
「はい。グリフィンドールの監督生だとか。兄が少しだけ話してました。」
「ああ、シリウス・ブラック。ブラック家で初のグリフィンドールなんだっけ?」
この世界でイレギュラーはすぐに情報として伝わってくる。セルウィン家も例外ではない。
「ブラック家の恥さらしだと、お母様が怒鳴っていました。僕はスリザリンに入らなければいけないんです。」
「ふーん。変なの」
「え?」
馬鹿らしいと思った。例え同じ家に生まれたとしても一人一人は違う人間。同じ道に進む方がおかしい。
「私、家族三人みんな違う寮なの」
「三人?」
「お父様がスリザリン、お母様がハッフルパフ。で、兄さんがグリフィンドール。家じゃ私がどこに入るか賭けが行われてたぐらいだもん。」
「すごいですね」
「でしょ。だからきっとどこに入っても楽しいよ。兄さんが言ってたし。グリフィンドールだろうとハッフルパフだろうとレイブンクローだろうとスリザリンだろうと」
きっとこれからの7年間は楽しいことがたくさんあるはずだ。私は信じて疑わない。
「これから7年間、同じ寮でも違う寮でもよろしくね。名前は?」
私はニッと笑って片手を差し出した。少年は目をパチクリさせた後同じように笑って私の手を取る。
「名前はレギュラス・ブラック。僕なんかでよければ、こちらこそ。」
こうして7年どころか一生の親友となるレギュラスと出会ったのです。