見知らぬ生徒
「久しぶり、レグ」
「お久しぶりです、ラミア」
無事に待ち合わせを済ませたラミアとレギュラスはコンパートメントを確保できていた。約2か月ぶりに顔を合わせたが、レギュラスは背が伸びたようでラミアは少し悔しかった。
「友人と約束があるんですよね?」
「うん。少しで良いから顔出せってさ。久しぶりだから楽しみだよ。」
ラミアと同部屋であるシンシアとコーデリア。二人に会うのも楽しみにしていた。
「もうそろそろ行こうかな。あんまり遅いと怒られそうだし。……レグは?ここにいる?」
「はい。他に行く用はないですから。僕のことは気にしないで下さい。」
「ありがと。行ってくるね」
ラミアは必要最低限の荷物だ絵を持って、コンパートメントを後にした。
比較的後ろの方のコンパートメントにいたラミアは、車両の前へ向かった。それより後方にいないことは確認済みだ。
しかし、思わぬところで足止めを食らった。途中の通路を何人かの生徒が塞ぎ座り込んでいたのだ。邪魔な生徒たちのあちら側にも、足止めを食らっている生徒がいるが、低学年なのか言い出せずにいた。ラミアは少し目を細め低い声で言った。
「邪魔、なんですけど」
「あ?なんだって?」
「お前、低学年だろ?先輩に楯突くのか?」
頭が悪そうだとラミアは思った。確かに年は相手の方が上のようだが……。
「楯突くも何も、こんな人の通るところで駄弁られると迷惑以外の何物でもないんですよ。そのくらい理解してください。周りをよく見たらどうですか。困っているのは私だけじゃないんです。」
ラミアは一息でスラスラといった。相手は呆然とした後一人の男子生徒が杖を構えて立ち上がった。
「なめやがって!」
「あまり下手なことはしない方が身のためだと思いますけど。」
「くらえっ……!」
男子生徒は勢いよく杖を振った。誰かの悲鳴が通路に響く。
ガシャン!!
「うわっ!!」
「だから、言ったのに。下手なことはしない方がいいって。」
相手は状況が読めていないようだった。男子生徒の呪文はラミアの方へまっすぐと飛んだが、ラミアは左手で光線を弾き飛ばしそのまま窓へ弾けていた。
座り込んでいた男子生徒がハッと我に返ると、やばい逃げるぞ!と言ってラミアの横を通り、そのままいなくなった。
ラミアは溜息をつくと、ローブのポケットから杖を取り出した。
「レパロ、直れ」
割れた窓が元に戻っていく。ラミアは気を取り直して友人を探そうと前を向くと、見知らぬ女子生徒が呆然と立ち尽くしていた。彼女も通路を通ることができずに困っていたのだ。
「大丈夫?あなた、1年生でしょ。」
「え、あ、……はい!大丈夫です!」
途中まで心ここに非ず状態だったが、少しずつ反応するようになっていた。ラミアの問いに勢いよくこたえていく。
「入学前から迷惑かけて、ごめんね。怪我はない?」
「大丈夫です。それに先輩の所為じゃないです!助けてくれてありがとうございます!」
女子生徒は顔を真っ赤にしたまま、通路を駆けていった。ラミアは呆然とその背を見送るだけだった。
「あ。やっと来ましたわね。」
「どうせ、レギュラス君とイチャイチャしてたんでしょ?」
「ごめん。でもレギュラスとイチャイチャなんてしてないよ。ちょっと邪魔されちゃってね。」
シンシアとコーデリアは少し先のコンパートメントを二人で使っていた。
「邪魔?」
「うん。先輩たちに通路塞がれちゃって……。」
「それは不幸だったね」
「うわ〜。他人事。」
懐かしい会話のテンポに、ラミアは嬉しくなった。
「今年からとうとう後輩が入学してくるのね!」
「後輩って言ったって歳一つしか変わらないじゃない」
「まあね。でも楽しみ!」
シンシアは上品な笑みで、コーデリアは満面の笑みで。変わらぬ友人たちにラミアも笑顔で答えた。
「今年もよろしくね」
「当然!」
「こちらこそ!」
今年も最高の一年が始まる。そんな確信にラミアはワクワクした。