3人の1年生
「運命の出会い」
「は……?」
「何言ってんだよ、リリス」
遅れてコンパートメントにやって来た幼馴染にアントニーは言葉を失い、セオドアは鼻で笑う。当のリリスはうっとりとした表情のまま早口に答えた。
「だって聞いてよ。すごいんだよ!正義の味方みたい!年上にも物怖じせずに正しいことを言えるなんて……!かっこよかった!」
「よかったじゃない。初日から寝坊したっていうから、どうなるかと思ったけど。運命の出会いがあったなんて、幸運だったね、リリス」
「わかってくれる?アントニー!」
「無理やり話を合わせることないだろ?アントニー。リリスのやつが言ってること、訳わかんねえよ?」
「セオは黙ってて!わからないあなたが悪いのよ!」
「意味わかんねえよ」
幼馴染の不可解な言動にセオドアはため息を吐く。しかしリリスは今だに熱く語り続ける。真剣に彼女の話を聞くアントニーはやはりお人好しだとセオドアは思った。
物心が付いたころにはすでに近くに二人がいた。プライマリースクールに共に通い、いつも遊んでいた。しかし3人はお互い以外に友人がいなかった。理由は簡単。3人には不思議な力があった。
直接触れずにものを動かしたり、動物と話をしたり。時には空に浮くことすらあった。化け物と他の子供たちに呼ばれ、3人で学校に行かない日もあった。
11歳になった夏、一人の男が3人のもとを訪れた。
「これは珍しい。マグルで魔法を使える子供は多くいるが、まさか3人一緒にいるとはね。お友達なのかい?」
突然現れた男に3人は警戒心を露わにした。マグルなんて言葉は知らないし、魔法ってどうゆうことだ?セオドアは混乱状態に陥った。
その後、迎えに現れた両親によりよくわからない空気は変わったが男から聞かされた話は夢のようだった。
「この子たちは魔法使い、魔女なのです。わが校、ホグワーツ魔法魔術学校に入学し、その力を伸ばしていきませんか?」
セオドアは目を輝かせた。きっとその学校には僕たちのような子供たちがたくさんいる。もう化け物なんて言われない。通いたいと思った。二人もセオドアと同じ気持らしい。
両親は子供たちの希望を快く受け入れてくれた。子供たちにとって辛い生活だったことは理解していたからだ。
そして3人はホグワーツに入学することになった。
落ち着いたリリスは一度深呼吸すると二人の親友の姿を見た。きっと楽しい学校生活が自分たちを待っているのだと思うと、驚くほどドキドキした。
自分は魔女なんだ。そして親友の二人は魔法使い。これ以上の運命ってないだろう!
「もう、楽しみ!!」
「そうだね!」
「だな」
3人を乗せた特急はどんどん進んでいる。あと数時間でホグワーツに着くのだろう。
ホグワーツについて組み分けという試練に目を見張るのは、もう少し後のこと。