最強にしてください。

「あれ、ここどこや。」

何故だか知らないけど、目が覚めた。
何にもない真っ白な場所、というより空間で、自分の姿すら見えない。

「綺凜。」

ふと声が私を呼んだ。
誰だろう、とあるかも分からない顔を上げると、色気が人の形になったような、女の人が目の前にいた。

──えっ、美女。

「ちょっと、貴女それ所じゃないでしょっ、…って、なんて事考えてるのよ!」
「痛い。」

えろい事を考えてぼーっとしていた時にバシッ、と叩かれたのは確かに頭だった。
どうやら見えないだけで実態はあるらしい。

「お姉さんこそ、何考えたんよ。」
「違っ…。もう、私には貴女の考えが全部流れ込んでくるの。女神だから。」
「へぇ…、コスプレも結構好きやで。」
「いい加減になさい!」
「いや、痛い。」

真っ赤になった女神様に叱られたから、えろい事は考えない事にする。
コホン、と咳払いをした女神様はようやく女神様らしく話し出した。

「余計なお世話よ。…と、そんな事より、綺凜。貴女をこれから異世界へ転移します。」

──えっ、それって女の子が居ない世界やないよね?可愛い子おる?じゃないと私生きていかれへん…。

「痛い!」
「死んだ事は覚えている?」
「え、無視?…覚えてるけど。」

女神様曰く、それは寿命を迎える前の不幸な死だったらしく、お詫びとして私を別世界に転移してくれるらしい。
私としては、可愛い女の子がいればどこでもいいし、なんならここで女神様と二人きりなんて事も受け入れる所存なのだけれど、それはまた殴られそうなので辞めておこう。

「で、貴女を転移するに当たって何かして欲しいことは無い?なんでもするわ。」
「なんでも…、なるほど……。」
「…そっ、それはしない!」

──なんでもするんじゃないの、女神様。

なんて、誘っては見たもののもう一度別の世界に行けるなどと言われると、私の中に眠る厨二心がくすぐられる。
となれば、願いはただ一つ。

「女神様。」
「な、なによ。」
「最強にしてください。」
「ベタね。」
「いいの。モテたいだけだから。」
「不純…。」

──あんな事見せられて赤面してるだけの女神様に言われたくはない。

「痛い!!」
「分かった。ステータスはどチートにしてあげるわ。元々貴女の行く世界は強者が必要だったし。世界を救ったら、ソレも、考えてあげる。」
「女神様、ソレやなくて、せっ…。」
「じゃあ、行ってらっしゃい。」

──あ、あかん。意識が遠ざかる。もうちょっとで女神様といちゃいちゃできたのに。