兄妹愛

「兄様!」

凛とした声で呼ばれたその兄は、振り返ると同時にぶつかる様な衝撃を与えられる。否、正しくは強く抱きしめられた。
手にしていた筆があらぬ方向へと行く前に離していて良かった、と溜息を吐く。

「どうした、今は稽古の時間じゃなかったのか。」

「早く終わったので、いち早く兄様に顔を見せようと。」

「いつも会っているだろ。…ああ、もう嫌という程会っている気がするんだが。」

そんな彼の気苦労や呆れ返った姿も気にする事なく彼女は笑みを浮かべる。

話から分かるように、法正はななしと兄妹である。しかし二人の性格はそれを思わせない位に正反対。兄は報復をする事を信条とし、妹は幸福にする事を信条とするとか。
それでも妹はそんな兄を愛して止まない、暇さえあればこうして抱き締めたり口付けをしてきたりとやりたい放題且つあるまじき行為であった。

「兄様といなければ私は死んでしまいます。」

「遠征の時は平気だろう。」

「必死に耐え忍んでいますから…さすがに任務は邪魔できませんので。」

兄様に迷惑がかかる、と悄気げるが毎日の行為に関してはそれを一切感じないのか、と心の中で指摘する。どちらかといえば日頃の事の方が法正にとって邪魔でならない。

文句は言いつつもそれらを許しているのは、彼女には頼れる人間がいないからである。親は既に亡く、唯一の身内は法正たった一人なのだ。一七、八歳、この複雑な時期にいないとなると、必然的に彼に甘えてくるしかない。



しかし、この関係に本当の真実があるのを彼だけが知っている。

「それで私、明日一緒に稽古がしたいんです!空いてますか?」

「……そうだな、悪いが昼過ぎからある女性と会わなければいけない。その後なら平気だ。」

女性、という言葉に敏感に反応する。ななしは少し寂しそうに分かりました、と頷いた。
何とも分かりやすい、と心で笑いその頭を撫でれば彼女は案の定驚いて彼を見た。

「子供扱いですか……。」

「まだまだ子供だろ。それにななしが考えているような奴でないし、そうだとしたらお前は真っ先にその女を張っ倒すだろうな。」

しません、などと首を振るが考えを見抜く事など容易い。

「強いて言うなら妹よりも優先されるのが悔しいです。私も普通の女性だったら……。」

女性だったら、でななしの心に何かが引っかかる。

「……そういえば私、前々から気になっていた事があるんです。」

「………どういった事で、だ。」

「こんな事本当は言いたくなかったんですけど、どうしても気になって。
…何故こんなにも兄妹は似ていないんでしょうか。性格も顔も似ていないってよく周りから言われるので、疑問に思い……。」

彼女が口にした言葉に、彼は撫でる手を止めた。そして気難しい顔をして目を伏せる。

「ああ、どうしてか…知りたいか?」

「知っているんですか?」

それはな、と口に弧を描くと同時に法正にはななしの身体に覆い被さった。何の事かさっぱりといった表情と顔を染める表情のどちらも交互に表して固まった。

「あ、兄様……?これは一体どう言う……。」

言い終わる前に唇に違和感を覚える。何かで塞がれている、それは紛れもなく目の前まで迫っていた法正の唇で。
ななしは驚いて肩を強張らせる、彼からする事など一切なかったのに突然の出来事に唯目を見開く事しか出来なかった。

「ん……!?」

思考が回らずされるがまま、口内を掻き乱す器用な舌に翻弄され続ける。それでもそんな行為に身体は素直なものですぐに反応を示した。

「ん……ぁ……。」

「ああ、その顔は官能的で唆る。」

驚きの顔はすっかり酔い痴れてしまって頬を赤く染めた。

「どうだ、好きで好きで堪らない俺からの接吻は。」

「……どうして、いきなり。」

息を上げたまま彼女は再び疑問をぶつける。上擦った声に潤んだ瞳、潤った唇、それすらも犯したくなる一因で。

「そうだな、理性はもうとっくに切れていた、とでも言っておくか。」

そういって右手で思い切り彼女の程良い膨らみを掴む、すると甲高い声を上げて顔を歪ませた。その間に左手は足の隙間に入り込み、その指で割れ目をゆっくりとなぞりあげる。

「あに、…さ、ま……っ。」

「成程…お前も望んでいるようで良かった。」

服越しからでも良く分かる、口付けだけでこれだけ感じているのだから。上から指を何度も擦れば恥ずかしさのあまり閉じようとする脚。しかしそれが煩わしい法正は抉じ開けて下着を外し、舐める様にじっと見つめた。

「ひ……!見ないで……!!」

「嘘だな、お前は見られたくて堪らないのだろう……?」

顔を寄せて生暖かい舌を這わせ舐めればあまりの快楽に身体が何度も痙攣する。自然に溢れ出る液を啜り、態とらしく水音を立てれば否定するように必死に両手で掴まれる頭。

「あ、………あ……っ!」

「どうだ、経験した事無い感覚は。」

「やめ、…っおか、しく……なり、そ………!」

「……はっ、嬉しそうで何よりだ。」

掴まれる手を呆気無く外して既に熱を帯びた己を彼女に宛てがう。すると顔をふるふると横に振り止める様懇願する姿が目に映った。

「待って…っ、私達、兄妹……です、よ……!?」

寧ろその言葉を待ち侘びていた法正は歓喜に満ちた目で

「だからこそ今はっきり言ってやる。お前と俺は、」

本当の兄妹ではないのだから、静かに言い放つと同時に処女特有の膜を引き裂く感触を味わう。

「……ぃ、ぁ…ああっ!!」

案の定痛みに耐え切れず悲鳴を上げて涙を散らした。それを和らげる為に深く口付けをして気を少しでもこちらに向く様にする。ゆっくりと奥まで入り切ると嫌でも上がってくる息。

背中がぞくぞくする、そんな感覚まで覚えた。

「ゆっくり動くぞ……力抜け。」

真実を受け入れる暇もなく腰は揺れる。いきなり打ち付けて壊さぬ様に律動を遅めて負担を掛けないようにした。

「………ん、ぁ……。」

暫くして痛みを越したのか、今度は甘い声を漏らして首に腕が巻き付く。それを合図に動きを速めて身体を浮かせていく。

「まっ…!速、い…あに、」

「考直だ、もう兄とは呼ぶな。」

「…………考…直っ!……考直…っ!!」

素直に名を呼んだ事に満足し、それでいい、と唇を塞ぐ。唾液が口端からだらしなく垂れても気にする事なく腰を何度もぶつけた。次第に締まってくる中に、彼もまた余裕の表情を無くしていく。

「あっ、や……なんか、きて……っ!」

「そうだ…初めての絶頂を、迎えろ。」

「……っぁあ……あっ!!!」

法正は色気を含む不敵な笑みをこぼして最奥に打ち付ける。腕を爪が食い込む程に握られたのと同時期にななしは火照る身体を弓なりに反らした。
未だ逝かずにいた法正は余韻に浸る彼女の中で動き、それに続いて精を注いでいく。全てを出しきるまで顔を胸に埋めて息を整えた。




「……あ……わた、し。」

「…………ああ。」

繋がった場所からは入りきらなかった混液が溢れ、乙女を喪った証である鮮血もそこから淡く滲ませた。

「………嬉しい、です。」

意識を朦朧とさせる中、思いもよらぬ言葉に目を細めた。

「………普通、嫌がるだろう。」

「だって……真実を知った今、私は…普通の女になれましたから……。」

そう微笑んで法正の頭を優しく抱き締めるななしは、嘘偽りなく嬉しそうだった。










「考直!」

それからというもの、それをいい事にななしは更に触れ合いを増やしてきた。
再び身体に衝撃を食らい、今度は筆があらぬ方向へと書きなぞられていく。

「例えお前でも……報いられる事は覚悟しろ。」

彼は筆を投げ捨て、彼女を押し倒しながら妖しく笑った。



(考直との子を産めるのが…嬉しいです)

(……嬉しいとは、良い意味で変わった奴だ)