反論さえ呑み込んで

「わ………!ほ、法正さん。」

湯浴みを済ました法正が上半身裸で出てきたのだが、あまりの色気に目のやり場に困ってしまった。気まずくなりそそくさとその場を立ち去ろうとするがそれを許す筈もない彼は扉の前に立ち塞がる。

「何処に行くつもりで。」

「お、お茶を汲みに行こうかと思いまして。」

「茶ならそこに置いてあるでしょう。」

「ついでにお菓子もあれば嬉しいな、と。」

「ああ、この時間につまむと太りますよ。」

ああ言えばこう言う、やはり言葉でも彼に敵いっこない。逞しい肉体がやけに近く次第に染まっていく頬、きっと彼も気付いているのだろう。

「顔色が優れないようですが……何かありましたか。」

「いえ………その………えっと。」

「…………ふ。」

何処か嬉しそうに口角を吊り上げた法正はななしの手を掴んで自分の元へと引き寄せる。当然その行動に驚かない訳もなく、彼女は目を見開いて言葉を失った。間近に迫るは未だ冷めやらぬ肉体、心臓の鼓動が一層速まり自分でも制御が効かない。

「貴女は分かりやすい………俺がこんな格好しているからだろ。」

「私がこうなると分かっててその格好してるんですか……!」

「ええ、まさかここまで忙しなくなるとは思いませんでしたが。」

「……………意地悪ですよ。」

「いいじゃないですか、どうせいつも見ているんですから。」

「………っ、言わないくださ……!」

見上げれば唇に人差し指を立てて悪戯に誘惑する法正、ほんのりと朱く色付く唇からちろりと覗かせるは真っ赤な舌。

「どうせなら今ここで、しますか。」

すっと整った顔が近付けば甘い口付けが落ちてくる。その色気に魅了された瞳は彼の姿で満たされて他にはもう何も見えない。既に世界に取り込まれてしまったのだ。

「ん……。」

言葉にすら出来ない位に二人の距離は近く、口内に広がっていくほろ甘い味。柔らかい下唇を甘噛みしては吸い付き、舌を出せばしっかりと絡めとられじっくりと堪能される。

もっと触れて欲しい、その誘惑に溺れてしまいたい。繋がる銀糸から漏れる吐息をも自分の物になれば。

「火照る身体はまだ熱が欲しいようだ、朝まで付き合ってもらいましょうか。」

存分に愉しませますから、その言葉を上回る快楽が迫るのは分かってるからこそななしは何も言わずに身体を委ねた。




(慣れないのは貴方がそれだけ未知なる魅力を持っているから)