第0話


 ぱちり、と目が合った。
 白い髪に白い着物。白の印象を与えるその人に色づいた、金色の瞳と目が合った。
「――」
 ひとつぶんの呼吸をする。
 何か声を掛けようと口を開くより早く、その目からふいと視線を外されてしまう。それから、何事もなかったかのように私の横をすり抜けて、私が向かう方向とは反対の方向に歩いていく。
 振り返って、ただなんとなく、その人の背中を眺めてみた。すぐにでもその背中を追いかけて、何か話しかけてみようか。……そう考えてみて、やっぱり止めた。
 一体、何を話すというのだろう。話題なんて、何一つ思いつかないというのに。
 この本丸の後継の審神者になって、一か月。
 私はあの人……鶴丸国永とまだ一度も言葉を交わしていない。