11:ココロ、ともる。
現在例の変人コンビが我が家で絶賛テスト勉強中、であります。
「おい日向。次のページ」
「ちょっと待てって。おれまだそこまでいってない」
事の経緯は昨日夕方、日向と偶然鉢合わせてしまった所まで遡る。
日向が新マネ候補である谷地さんの家で勉強を教えて貰ったんだ、と嬉しそうに報告してくれた直後『でもノートを書き写すのでいっぱいいっぱいで⋯結局地理まで手が回んなかった』と絶望的なテンションで告げられ、更に数学も今のままじゃヤバイ気がする⋯と付け加えたので思わず助け舟を出してしまった。
そして本日、自宅の場所が分からないだろうと嶋田マートの前で待ち合わせの約束をしたところ日向が先に到着し、その場で待機していると偶然ランニング中の影山が通りかかる。
「おっ 影山〜」
「日向?お前何やってんだ」
「へへ、神崎さんと待ち合わせー」
ピクリ、と影山の眉が動く。
「神崎と⋯?」
「昨日お前と別れてからおれ、谷地さん家に教科書取りに戻っただろ?その帰りに神崎さんに偶然会って、テスト勉強の話してたら成り行きで地理のノート写させて貰えることになったんだ!そんで今、神崎さんが来るの待ってんの」
「はぁ?!テメー!自分だけぬけがけかよ!?」
「ぬけがけって何だよ?!」
「俺だって地理はまだ「日向、と影山⋯くん?二人共何してるの」
待ち合わせ場所まで来てみれば。
学校でよく見るおなじみの光景が目に入り、思わず低い声が出る。すると二人はピタッと言い争いをやめて同時に振り向いた。
「おはよう神崎さん!」
「ちっす」
「おはよう。待たせてごめんね日向。っていうか、どうして影山くんまで⋯?」
「走ってたら偶々こいつが居て、」
「おれが神崎さんに地理のノート写させて貰うんだって話したら影山が『自分だけぬけがけかよ?!』とか訳分かんないこと言いだしてイキナリ絡んできました」
「あ”ぁ”?!」
「おれ何か間違ったこと言ったかよ?!」
「ちょっと、学校じゃないんだからあんまり大声出さないで」
そう言うと二人は通りすがりの人々の視線が自分達に向けられている事にようやく気付いたらしい。
「⋯ごめん神崎さん」
「⋯⋯」
日向は叱られた子犬みたいな目をして素直に反省の弁を口にしたのに対し、影山はふてくされた子供そのもので無言のまま唇を尖らせている。
これじゃ“小学生”と云われても文句は言えない気がするけど。
「もしかして影山くんも地理まで手が回ってないの?」
「⋯ウス」
「だったら影山くんも一緒に来てノート写す?」
「⋯⋯いいのか?」
「うん。別に構わないけど」
「! あざッス!!」
「どういたしまして。―あ、でも影山くんは一度帰って勉強道具用意してこなきゃね。その間に私と日向は此処でお昼の買い出しするから。待ち合わせはあの角の所でいい?」
「ああ」
「じゃあ悪いけど日向、行く前にちょっと買い物付き合ってね」
「オス!」
そんなこんなで冒頭に戻り、二人がノートを書き写している間に私は昼食の下準備をしている。
「谷地さんのノートも見やすかったけど、神崎さんのノートもキレイに纏まってるよなー」
「そうか?どう書いてたって内容は同じだろ」
「お前さぁ〜ホントそういうとこな?モテない原因」
「だから余計なお世話だッ」
「ほらほら二人共、口よりも手を動かしてください」
「「!!!」」
はっと我に返った影山と日向は再びシャーペンをいそいそと動かし始める。粗方下準備は終わったので私も勉強しようと英語の教科書とノートを机に広げた。
「神崎さん英語は得意?」
今度はちゃんと手を動かしながら日向が問う。
「嫌いじゃないけど得意でもない。でも将来絶対役に立つから今からもう一回頑張ってみようかなって」
「もう一回??」
「(しまった)あ⋯えーと⋯中学の時みたいに分からない所を放置しないでちゃんとやっていこうって意味」
「日本人に英語が分かるか」
「まぁそう言いたくなる気持ちは分かるけど。でも日向も影山くんも将来バレーをずっとやっていきたいって考えてるんだよね」
「ああ」「おす」
「仮にプロになったとしてもそこで終わりじゃない。二人は更に上へ上へ⋯って高みを目指していくんだと思うし、そうなったら海外遠征なんかも視野に入れて考えると思う。その時少しでも英語が使えるか、話せるかどうかでチームメイトとのコミュニケーションも⋯」
そこまで言って、黒とオレンジの強烈な視線が向けられていることに気づいて咄嗟に口を噤む。
「なんか⋯神崎さんってすげーな。考え方とか色々、視野が広い?っつーか。―あ、前から気になってたんだけど神崎さんバレーに興味あんの?」
以前同じような質問をされたことを思い出す。その時は何気なくさらっと流したけれど⋯今日は場所とタイミング的に上手く躱せる気がしない。しかも前回スルーされた張本人(王様)もその時のことを覚えているようで「今回は逃がさねーからな」と言わんばかりだ。
「きょ⋯興味?興味は⋯ないこともない、ような⋯あるような⋯」
「どっちだよ」
「もしかして、バレー経験者だったりしない?」
「? どうして」
「おれレクのとき神崎さんがトス上げたとこ、偶然見てたんだ!」
「⋯⋯マジですか」
「マジですよ」
「「「⋯⋯⋯」」」
好奇心が満ち溢れんばかりのキラキラした瞳と、まるで容疑者を尋問しているかのような鋭い瞳の同時攻撃を受ける。
「―そういえば、新しいマネージャー決まったんだってね」
「⋯おい」
「神崎さんがスルーしたぁぁぁ」
「スルーしたなんて人聞き悪い⋯!バレーについてはさっき一応、、答えたし」
「往生際が悪ぃにも程があんぞ、ゴラ」
「影山クン!女の子にその凶悪面向けんのヤメテ!!」
「あ”?俺は元々こういう顔だっつってんだろ」
どうあっても最終的に喧嘩になる二人に苦笑しながら続ける。
「実は清水先輩、私にもマネの件で声掛けてくれたんだけど⋯私“可もなく不可もなく”みたいな返事しちゃって。勿論バイトの事もあるしバレーに関しては個人的に色々思うことがあるのも事実なんだけど⋯一生懸命な人に対する自分の態度は明らかに褒められたものじゃないし、それが心苦しくて」
「「⋯⋯」」
「でも無事に新しい子が見つかったみたいだし、本当良かった」
「けど清水先輩がいなくなったらまた谷地さん一人になっちゃうし。もう一人バレーの知識ある人が加わったら烏野マネも最強じゃん!な?影山」
「⋯そうだな」
「も〜!影山クン冷たい」
「んなもん、神崎が決めることで俺らがどうこう言ったって仕方ねぇだろうが」
「そりゃそうだけど、」
「ありがとう日向。影山くんも。すぐにどうするって答えは出せないけど⋯でも、頭ごなしに否定しないでちゃんと考えてみようかな⋯と今はちょっと思ったりもしてるから」
「――そっか!ヨシ、じゃあ勉強の続きやんべ」
「おう」
「そうだね。一先ずお昼ご飯まで頑張ろう」
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2020/06/10
お題配布元:Cock Ro:bin
「おい日向。次のページ」
「ちょっと待てって。おれまだそこまでいってない」
事の経緯は昨日夕方、日向と偶然鉢合わせてしまった所まで遡る。
日向が新マネ候補である谷地さんの家で勉強を教えて貰ったんだ、と嬉しそうに報告してくれた直後『でもノートを書き写すのでいっぱいいっぱいで⋯結局地理まで手が回んなかった』と絶望的なテンションで告げられ、更に数学も今のままじゃヤバイ気がする⋯と付け加えたので思わず助け舟を出してしまった。
そして本日、自宅の場所が分からないだろうと嶋田マートの前で待ち合わせの約束をしたところ日向が先に到着し、その場で待機していると偶然ランニング中の影山が通りかかる。
「おっ 影山〜」
「日向?お前何やってんだ」
「へへ、神崎さんと待ち合わせー」
ピクリ、と影山の眉が動く。
「神崎と⋯?」
「昨日お前と別れてからおれ、谷地さん家に教科書取りに戻っただろ?その帰りに神崎さんに偶然会って、テスト勉強の話してたら成り行きで地理のノート写させて貰えることになったんだ!そんで今、神崎さんが来るの待ってんの」
「はぁ?!テメー!自分だけぬけがけかよ!?」
「ぬけがけって何だよ?!」
「俺だって地理はまだ「日向、と影山⋯くん?二人共何してるの」
待ち合わせ場所まで来てみれば。
学校でよく見るおなじみの光景が目に入り、思わず低い声が出る。すると二人はピタッと言い争いをやめて同時に振り向いた。
「おはよう神崎さん!」
「ちっす」
「おはよう。待たせてごめんね日向。っていうか、どうして影山くんまで⋯?」
「走ってたら偶々こいつが居て、」
「おれが神崎さんに地理のノート写させて貰うんだって話したら影山が『自分だけぬけがけかよ?!』とか訳分かんないこと言いだしてイキナリ絡んできました」
「あ”ぁ”?!」
「おれ何か間違ったこと言ったかよ?!」
「ちょっと、学校じゃないんだからあんまり大声出さないで」
そう言うと二人は通りすがりの人々の視線が自分達に向けられている事にようやく気付いたらしい。
「⋯ごめん神崎さん」
「⋯⋯」
日向は叱られた子犬みたいな目をして素直に反省の弁を口にしたのに対し、影山はふてくされた子供そのもので無言のまま唇を尖らせている。
これじゃ“小学生”と云われても文句は言えない気がするけど。
「もしかして影山くんも地理まで手が回ってないの?」
「⋯ウス」
「だったら影山くんも一緒に来てノート写す?」
「⋯⋯いいのか?」
「うん。別に構わないけど」
「! あざッス!!」
「どういたしまして。―あ、でも影山くんは一度帰って勉強道具用意してこなきゃね。その間に私と日向は此処でお昼の買い出しするから。待ち合わせはあの角の所でいい?」
「ああ」
「じゃあ悪いけど日向、行く前にちょっと買い物付き合ってね」
「オス!」
そんなこんなで冒頭に戻り、二人がノートを書き写している間に私は昼食の下準備をしている。
「谷地さんのノートも見やすかったけど、神崎さんのノートもキレイに纏まってるよなー」
「そうか?どう書いてたって内容は同じだろ」
「お前さぁ〜ホントそういうとこな?モテない原因」
「だから余計なお世話だッ」
「ほらほら二人共、口よりも手を動かしてください」
「「!!!」」
はっと我に返った影山と日向は再びシャーペンをいそいそと動かし始める。粗方下準備は終わったので私も勉強しようと英語の教科書とノートを机に広げた。
「神崎さん英語は得意?」
今度はちゃんと手を動かしながら日向が問う。
「嫌いじゃないけど得意でもない。でも将来絶対役に立つから今からもう一回頑張ってみようかなって」
「もう一回??」
「(しまった)あ⋯えーと⋯中学の時みたいに分からない所を放置しないでちゃんとやっていこうって意味」
「日本人に英語が分かるか」
「まぁそう言いたくなる気持ちは分かるけど。でも日向も影山くんも将来バレーをずっとやっていきたいって考えてるんだよね」
「ああ」「おす」
「仮にプロになったとしてもそこで終わりじゃない。二人は更に上へ上へ⋯って高みを目指していくんだと思うし、そうなったら海外遠征なんかも視野に入れて考えると思う。その時少しでも英語が使えるか、話せるかどうかでチームメイトとのコミュニケーションも⋯」
そこまで言って、黒とオレンジの強烈な視線が向けられていることに気づいて咄嗟に口を噤む。
「なんか⋯神崎さんってすげーな。考え方とか色々、視野が広い?っつーか。―あ、前から気になってたんだけど神崎さんバレーに興味あんの?」
以前同じような質問をされたことを思い出す。その時は何気なくさらっと流したけれど⋯今日は場所とタイミング的に上手く躱せる気がしない。しかも前回スルーされた張本人(王様)もその時のことを覚えているようで「今回は逃がさねーからな」と言わんばかりだ。
「きょ⋯興味?興味は⋯ないこともない、ような⋯あるような⋯」
「どっちだよ」
「もしかして、バレー経験者だったりしない?」
「? どうして」
「おれレクのとき神崎さんがトス上げたとこ、偶然見てたんだ!」
「⋯⋯マジですか」
「マジですよ」
「「「⋯⋯⋯」」」
好奇心が満ち溢れんばかりのキラキラした瞳と、まるで容疑者を尋問しているかのような鋭い瞳の同時攻撃を受ける。
「―そういえば、新しいマネージャー決まったんだってね」
「⋯おい」
「神崎さんがスルーしたぁぁぁ」
「スルーしたなんて人聞き悪い⋯!バレーについてはさっき一応、、答えたし」
「往生際が悪ぃにも程があんぞ、ゴラ」
「影山クン!女の子にその凶悪面向けんのヤメテ!!」
「あ”?俺は元々こういう顔だっつってんだろ」
どうあっても最終的に喧嘩になる二人に苦笑しながら続ける。
「実は清水先輩、私にもマネの件で声掛けてくれたんだけど⋯私“可もなく不可もなく”みたいな返事しちゃって。勿論バイトの事もあるしバレーに関しては個人的に色々思うことがあるのも事実なんだけど⋯一生懸命な人に対する自分の態度は明らかに褒められたものじゃないし、それが心苦しくて」
「「⋯⋯」」
「でも無事に新しい子が見つかったみたいだし、本当良かった」
「けど清水先輩がいなくなったらまた谷地さん一人になっちゃうし。もう一人バレーの知識ある人が加わったら烏野マネも最強じゃん!な?影山」
「⋯そうだな」
「も〜!影山クン冷たい」
「んなもん、神崎が決めることで俺らがどうこう言ったって仕方ねぇだろうが」
「そりゃそうだけど、」
「ありがとう日向。影山くんも。すぐにどうするって答えは出せないけど⋯でも、頭ごなしに否定しないでちゃんと考えてみようかな⋯と今はちょっと思ったりもしてるから」
「――そっか!ヨシ、じゃあ勉強の続きやんべ」
「おう」
「そうだね。一先ずお昼ご飯まで頑張ろう」
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2020/06/10
お題配布元:Cock Ro:bin