08:坂ノ下商店
昼休み半ば。
いつものように3組の教室前に日向がやってきた。
「おーい影山〜」
「悪ぃ日向、ちょっと待ってろ」
ここ最近授業中の態度(居眠り)があまりにも酷く、授業終了後個別に注意を受けていた影山は昼食を食べ始めるのが遅くなってしまった。ガツガツと弁当の中身をかきこんでいる影山を廊下から確認した日向は何となく事情を察し「しつれいしまーす」と一応声を上げてから教室の中に足を踏み入れる。
聞きなじみのある声に視線を向けると此方に寄ってくる日向と目が合った。
「ちわ!神崎さん」
「日向、どうしたの?」
「影山の弁当待ち」
バレーボールを手にした日向の返答に隣席をチラ見し、成る程と合点がいく。
「神崎さん何読んでるの?」
「バイトの求人情報誌」
「バイト?」
「うん。バイト先探してるんだけど中々コレっていうのが見つからなくてね。何件か面接にも行ったんだけど」
「面接とかかっけー!俺も、」
「――日向待たせた。行くぞ」
日向が言いかけた所で弁当を食べ終えた影山の声が割って入り、会話はそこでストップ。
「ごめん神崎さん!じゃあまた!」
「うん。練習頑張って」
***
学校からの帰り道、もうすぐ醤油が切れそうだったことを思い出し初めて坂ノ下商店に立ち寄った。
「らっしゃーい」
後の烏野男子バレー部コーチこと、鳥養繋心が店番をしている。
彼が気の良い人物だということは分かっているけれどやっぱり見た目がちょっとヤンキーっぽい。
一瞬そんな感想が過るもずっとバイト先のことを考えていた。
いくつか候補はあったものの好条件だと思う求人は自宅&学校から遠かったり、はたまた学校帰りでも通いやすいと思った所は学生が働くには少々融通が利き辛かったりして未だ決められず現在に至る。
(はぁ⋯)
もう少し都会なら日雇のバイトも豊富なのにな、とモヤモヤしながら発見した醤油を1つ取ってレジに向かう。
「250円な」
財布から小銭を出して鳥養さんに300円を手渡す。
「まいどー」
釣り銭と共にそう声を掛けられた時にふと、思いついた。
見たところバイト募集の張り紙など無いけれど立候補しておいて損はないんじゃないだろうか。
「あ、あの⋯!」
「ん?」
「このお店ってバイト募集したりする予定はありませんか」
「バイト?あ〜⋯悪ィけど俺一人で十分手は足りてるんだ」
「もしも、でいいです。もし今後人手が必要になるような事があったら私をアルバイトで雇ってくれませんか」
こう見えて在庫管理も得意ですし、力仕事も私でやれる範囲ならきちんとやります!
その力説っぷりに鳥養は若干引き気味になりながらも、咄嗟に無難な返事をした。
「あ、あぁ⋯。一応頭に入れとくよ」
「私烏野高校一年の神崎春菜です。よろしくお願いします」
「でも可能性は限りなく低いからな。他で見つかったら迷わずそっちにいけよ」
「はい。ありがとうございます」
ペコリと頭を下げ、醤油を受け取り店を後にする。
一先ず顔繋ぎはできたしその場の思いつき作戦としては及第点だ。
(鳥養さんの今後を考えたら可能性はゼロじゃない)
上手いこと事が運べば私としてもラッキーだ。
元々時給にはそこまで重きを置いてる訳ではなかったし、この立地なら急遽のバイト依頼にだって応えられる。何より鳥養さんなら学生という立場と環境にも理解があるだろうからテスト期間中なんかも臨機応変に対応してくれるだろう。
とりあえず、採用された時のことを想定して重い物でも抱えて運べるように今日から筋トレを始めることにした。
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2020/06/07
いつものように3組の教室前に日向がやってきた。
「おーい影山〜」
「悪ぃ日向、ちょっと待ってろ」
ここ最近授業中の態度(居眠り)があまりにも酷く、授業終了後個別に注意を受けていた影山は昼食を食べ始めるのが遅くなってしまった。ガツガツと弁当の中身をかきこんでいる影山を廊下から確認した日向は何となく事情を察し「しつれいしまーす」と一応声を上げてから教室の中に足を踏み入れる。
聞きなじみのある声に視線を向けると此方に寄ってくる日向と目が合った。
「ちわ!神崎さん」
「日向、どうしたの?」
「影山の弁当待ち」
バレーボールを手にした日向の返答に隣席をチラ見し、成る程と合点がいく。
「神崎さん何読んでるの?」
「バイトの求人情報誌」
「バイト?」
「うん。バイト先探してるんだけど中々コレっていうのが見つからなくてね。何件か面接にも行ったんだけど」
「面接とかかっけー!俺も、」
「――日向待たせた。行くぞ」
日向が言いかけた所で弁当を食べ終えた影山の声が割って入り、会話はそこでストップ。
「ごめん神崎さん!じゃあまた!」
「うん。練習頑張って」
***
学校からの帰り道、もうすぐ醤油が切れそうだったことを思い出し初めて坂ノ下商店に立ち寄った。
「らっしゃーい」
後の烏野男子バレー部コーチこと、鳥養繋心が店番をしている。
彼が気の良い人物だということは分かっているけれどやっぱり見た目がちょっとヤンキーっぽい。
一瞬そんな感想が過るもずっとバイト先のことを考えていた。
いくつか候補はあったものの好条件だと思う求人は自宅&学校から遠かったり、はたまた学校帰りでも通いやすいと思った所は学生が働くには少々融通が利き辛かったりして未だ決められず現在に至る。
(はぁ⋯)
もう少し都会なら日雇のバイトも豊富なのにな、とモヤモヤしながら発見した醤油を1つ取ってレジに向かう。
「250円な」
財布から小銭を出して鳥養さんに300円を手渡す。
「まいどー」
釣り銭と共にそう声を掛けられた時にふと、思いついた。
見たところバイト募集の張り紙など無いけれど立候補しておいて損はないんじゃないだろうか。
「あ、あの⋯!」
「ん?」
「このお店ってバイト募集したりする予定はありませんか」
「バイト?あ〜⋯悪ィけど俺一人で十分手は足りてるんだ」
「もしも、でいいです。もし今後人手が必要になるような事があったら私をアルバイトで雇ってくれませんか」
こう見えて在庫管理も得意ですし、力仕事も私でやれる範囲ならきちんとやります!
その力説っぷりに鳥養は若干引き気味になりながらも、咄嗟に無難な返事をした。
「あ、あぁ⋯。一応頭に入れとくよ」
「私烏野高校一年の神崎春菜です。よろしくお願いします」
「でも可能性は限りなく低いからな。他で見つかったら迷わずそっちにいけよ」
「はい。ありがとうございます」
ペコリと頭を下げ、醤油を受け取り店を後にする。
一先ず顔繋ぎはできたしその場の思いつき作戦としては及第点だ。
(鳥養さんの今後を考えたら可能性はゼロじゃない)
上手いこと事が運べば私としてもラッキーだ。
元々時給にはそこまで重きを置いてる訳ではなかったし、この立地なら急遽のバイト依頼にだって応えられる。何より鳥養さんなら学生という立場と環境にも理解があるだろうからテスト期間中なんかも臨機応変に対応してくれるだろう。
とりあえず、採用された時のことを想定して重い物でも抱えて運べるように今日から筋トレを始めることにした。
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2020/06/07