Red AngelE

「ベルモット、さん⋯?」
「久しぶりねぇRed Angel」

学校から帰宅してみれば、そこには以前ジンと食事をした際に世話になったベルモットの姿が。ギョッとしながらも彼女があまりにも堂々とソファで寛いでいるものだから名前は呆気にとられてしまう。

「あの⋯どうしてここに⋯?」
「貴女がどんな暮らしをしてるのか、ちょっと覗きに来たの」
「えぇ?!」
「フフ⋯まぁそれは半分冗談。本当の目的は、」

それよ、とベルモットが差した先には大中小の白い箱が一つずつ。包装はされていないが綺麗にリボンが掛けられている。

「あれを私に?」
「ええ。開けてごらんなさい」

名前はダイニングテーブルに近づくと一番手前にある大きい箱に手を伸ばし、丁寧な動作でリボンを解いて上蓋を持ち上げた。

「これって」
「少し間が空いてしまったけどジンに頼まれていたものよ」

中にはあの日、自らが選んだもう一つの白いドレスが入っていた。残りの箱にはドレスに合わせた靴、バッグなどの装飾品が。

「私受け取れません⋯!」
「あら、どうして?」
「だってこんな高価な物、この前貰ったドレスだけでもいっぱいいっぱいなのに」
「ジンからのプレゼントよ。嬉しくないの?」

まあ貴女がどうしても受け取りたくないっていうならジンに直接言って頂戴。せっかくここまで運んだのに、また持って帰るのも面倒だし。

ベルモットは素知らぬ顔で言い放つ。
一方、名前は困ったように眉をへの字に曲げている。

「気持ちは嬉しいに決まってます。ただ、ジンに申し訳なくて」
「ならいいじゃないの。それに過度な遠慮は相手にも失礼よ?」

ここは素直に受け取っておきなさい、とベルモットは優しくたしなめた。

「折角だし今夜それを着て一緒にパーティーに行きましょう」
「パーティー、ですか?」
「明日は土曜日だから貴女も学校はお休みでしょう?」
「それはそうなんですけど」
「じゃあ決まりね。ヘアメイクしてあげるからさっさと着替えてらっしゃい」
「ちょ、ちょっと待ってくださ「口答えはいいから早くお行きなさい!」

ベルモットの有無を言わせぬ迫力に名前は結局逆らうことができぬまま、急遽彼女に連れられパーティーに参加することが決定された。

ドレスに着替えベルモットにヘアメイクを施してもらう。そんなこんなであっという間に名前のドレスアップは完了した。その後二人でマンションの下まで降りていくと、いつからいたのかエントランスの入り口前にリムジンが待機している。

「乗りなさい」
「は、はい」

失礼します、と名前はぎこちなく車に乗り込む。彼女が落ち着いたのを確認するとベルモットも後に続く。車が走り出して暫くは二人で他愛無いお喋りを楽しんでいた。すると途中でベルモットは慣れた様子で車内に用意されたシャンパングラスを2つ手に取る。

「エンジェルも一杯どう?」
「いえ、私まだ未成年なので」
「つれないわねぇ」

云いながらベルモットはシャンパンをグラスに注ぐ。ゴールドの液体を優雅に口に運ぶ様がとても美しく、同性ながら思わず見惚れてしまう。

「なぁに?やっぱり欲しくなったの?」
「いいえ、その、綺麗だなぁと思って」
「ふふ。まあこれでも一応ハリウッド女優だもの」
「⋯⋯え?」

そう云われてみれば、確かに見覚えが⋯。

「クリス・ヴィンヤード!」
「あらやだ、今頃気づいたの?」
「だってこんな身近に大スターがいるなんて思いませんよ普通!」

あぁ、どうしよう⋯!
今更ながらあたふたし始める名前。単純すぎる動向にベルモットは頬を緩める。

「今まで通り普通にして頂戴。肩書きなんてどうでもいいじゃない」
「いや、でも、」
「ほら、着いたわよ」

運転手が後部座席のドアを開くとベルモットはそそくさと降りてしまう。早くなさい、と急かされるまま名前も後に続いた。ホテルに着くとベルモットは自身も着替えてくるから、と1階のカフェで暫く時間を潰すように言ってそれから20分もしないうちに戻ってくる。

「ベルモットさん⋯綺麗すぎてちょっと近寄り難いです」
「あら、貴女も十分キレイよ?」
「そんなお世辞はいらないですって」
「あら。お世辞なんかじゃないのに。―さて、そろそろ会場に移動しましょう」
「あの〜⋯」
「どうしたの?」
「私パーティーなんて出たことないんで、マナーとか全然分からないんですけど」
「それは心配しなくても大丈夫」

立食パーティーだから貴女はただ好きな物を食べて飲んで楽しめば良い、とベルモットは軽い調子で諭すと名前を引き連れて会場入りした。

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2014/7/4
加除修正 2023/4/6