Red AngelJ

名前はベルモットと二人でとあるカフェに居た。

「あれからジンは訪ねてきた?」
「いえ、一度も」
「そう」
「やっぱりまだ怒ってるんですかね」
「ふふ、怒らなきゃいけないのは貴女の方でしょう?」
「それは⋯そうなんですけど」
「――それで?」
「え?」
「他に何か悩んでる事でもあるんじゃないの?」
「そう、見えますか」
「ええ」
「ジンもベルモットさんもどうしてそんなに鋭いんですか⋯」
「貴女が分かりやすいからよ」

複雑そうな顔をした名前に彼女は「根が素直ってことよ」とさりげなくフォローを入れた。その素直さが凄く羨ましい、ということはあえて口には出さずに。

「実は⋯この前パーティーで出会った男性にお茶に誘われたんです」
「パーティーでって、あの寶井財閥の?」
「はい」
「また彼と会う機会でも?」
「私が通ってる学校まで向こうから訪ねてきてくれて⋯」
「貴女、そんなことまで彼に話してたの?」
「まさか!名前はうっかり本名を教えちゃったんですけど、それ以外は特に」
「ふーん⋯」

名前を使ってわざわざ調べたのか。そこまでするとは余程名前の事が気に入ったのだろう。確か彼は兄と違って性格も人当たりも良く、悪い噂も耳にしたことはない。これはもしかしたら良い機会かもしれない。

ベルモットは何か思いついたのか、小悪魔と呼ぶにふさわしい妖しげな笑みを浮かべた。それを見た名前は一瞬背中にゾクリと悪寒が走る。

「ねぇ⋯」
「は、はい」
「貴女そのお茶の誘い、受けちゃいなさいよ」
「は?」
「いいじゃないお茶くらい。貴女も年頃の女の子なんだから偶には異性とデートくらいしてきなさい」
「デート?!」
「エンジェルは今フリーなんだし、毎日違う男とデートしたっていいのよ」
「毎日違⋯!?わ、私はベルモットさんと違ってそんな度胸も器量も持ち合わせてませんのでッ」
「そんなに動揺しなくてもいいじゃない。ちょっとしたジョークよ。ま、せっかくのお誘いなんだから一度行ってきなさい。よく知らない相手で貴女も色々不安があるでしょうから、場所と時間はこっちが指定するのよ。そうね⋯オープンテラスのカフェなんかだとより安心かしら」
「でも私っ、」
「会ってみて合わないと思えば次の約束をしなければ済む話。いい?分かったわね?」

明らかにノーと云える雰囲気ではない。
ベルモットの勢いに気圧され、気が付けば名前は首を縦に振っていた。

あれほど忠告してあげたのにいつまでも意地を張り続けてるジンが悪いのよ。手放すのか、手放さないのか、はっきり答えを出せないのならアタシが特別に種を撒いてあげる。これであとはジンがどう出るか⋯ってところかしら。最後はどっちに転ぶのかアタシにも解らないけれど、エンジェルが幸せになればそれでいいわ。

フフ⋯これでまた少し面白くなりそうね。

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2014/11/7
加除修正 2023/4/6