04:ありえない!!

「これは一体どういうこと⋯?」
「remodeling」
「何さらっと英語で答えてんのよ」

そんなんじゃ誤魔化されないんだから!!

彼女が住むマンションの間取りは2LDK。元々一人暮らしだったため一つは自室として使用していたが、残りの一部屋は日常特に使用することもなく簡素な物置状態と化していた。しかしジンと生活を共にすることになり、当然その部屋は彼が使用する運びに。

先日二人で買い物に出かけた際、キングサイズのベッドを購入しようとしていたジンを何とか説得して最終的にはダブルのロング仕様を買う事で彼も納得した筈だったのに。仕事から帰宅し、着替えようと自室のドアを開けた名前の眼前に広がったのは大きなベッド。あと部屋に残されているのはベッド脇に置いていたサイドテーブルと衣類ケースのみ。自身が使用していたベッド、パソコン、机、本棚は一体何処へ⋯。

ハッとして名前はくるりとUターンするとジンに貸し与えている部屋までダッシュする。中を見ると行方不明になっていた家具達がそこにいた(ベッドを除く)。ジンが使うものと名前が使うものとが綺麗に部屋の奥と手前で分けられていて、今後はここが互いの仕事部屋だ、というのが暗に強調されていた。

怒鳴りつけたい衝動を何とか抑えつつ、深呼吸をしながらリビングへ。この事件の犯人であるジンは暢気にテレビのチャンネルを変えている。名前の怒りゲージ上昇は止まらない。

「⋯念のため確認するけど、私のベッドは?」
「業者に引き取ってもらった」
「で、あのベッドは何?どうしたの」
「お前が五月蠅いからクイーンで妥協してやったんだ。有難く思え」
「あのときダブルでいいってジンも納得してたじゃん!」
「会計の時に気が変わってな」

最後まで目を離しちゃいけなかった⋯!

今朝仕事に行く前までは確かに家具の配置は変わっていなかった。どうせウォッカさんにでも頼んで無理やり手伝わせたのだろう。自分がいない隙を見計らって事を進めるとは⋯流石は元闇の組織の人間といったところか。名前の口からはもう溜息しか出てこない。

「そんなことよりさっさと着替えて来い。飯にするぞ」
「え、もしかして夕食用意してくれたの?」
「まぁな」

ちゃんと手も洗えよ、とまるで子供に言い聞かせるように付け加えるとジンはキッチンに立つ。お腹が空いていた名前は結局ジンの指示通り急いでラフな格好に着替え、手を洗ってからダイニングテーブルの椅子に腰かけた。ベッドと模様替えの件はとりあえず後回し。ジンの手料理なんてお粥を作ってもらったとき以来だ。

テーブルにはすでにワインとグラスが並んでおり、続いてスープとサラダが運ばれる。最後に本日のメインディッシュであるパスタが登場。程良いガーリックの香りが食欲をそそる。ジンも席につくとそれぞれのグラスにワインを注いだ。

「ね、ね、食べてもいい?」
「ああ」
「いただきまーす」

返事を聞くや否や、名前はパスタをフォークに絡める。ふんだんに魚介が使用されたペペロンチーノ。上に散らされた大葉がアクセントになっていてさわやかさも感じさせる。勿論スープもサラダも美味しくて名前は極上の笑み。以前体調を崩した時もそうだったが、ジンが自分の為に作ってくれたという事実がより一層料理の味を惹き立てていた。

「なんだかイタリアンのお店に来てるみたい」
「相変わらずめでたい女だな⋯」
「ジンって本当に料理できるんだね!しかも上手だし」
「料理をしない奴に他人の作った物を評価する資格はない」
「⋯なるほど」

ジンらしい考え方だと名前は妙に納得してしまう。
さすがは歩く辞典サマ。

「言っとくけど!さっきの件はまだ怒ってるんだからね」
「チッ⋯。てっきり餌付けは成功したモンだと思っていたが」
「今舌打ちしなかった?しかも餌付けって」
「これからは毎日一緒にいるんだ。ベッドも共にした方が何かと都合が良いだろう?」
「は?なんでよ」
「お前を啼かせた後、一々部屋まで運ばずに済むからな」
「なっ?!」

ジンの宣言通り、名前はその日の夜も散々啼かされるハメに。しかもあれだけ文句を言っていたにも関わらず新しいベッドは何だかんだで寝心地が良く、次の朝は寝坊してしまうというオチが待ち受けていた。


2014/8/4

〜早朝リビングにて〜
(なんで起こしてくれなかったの?!)
(なんだ、まだ寝ていたのか)
(遅刻したらジンのせいだからね!?(あのベッド寝心地良すぎ!))
(車で送っていってやろうか?)
(え!ほんと?!)
(その代わり、これで昨日の件はチャラにしろよ)
(⋯⋯了解)

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