07:運命のルーレット廻して

「シュウがお菓子を食べてるなんて珍しいわね」

ジョディは赤井のデスクに置かれた可愛らしい小袋に目をやり、彼に咎められる前にすかさずクッキーを1枚失敬して口の中に放り込んだ。

「あら、すごくおいしい!でもこれ⋯」

シュウ、あなた確かシナモン苦手じゃなかった?
ジョディの問いかけに赤井は素直に頷く。

「ああ。だがこのクッキーのおかげでどうやら克服したようだ」
「へぇ〜そんなことってあるのね」

もしかして、特別な相手からの贈り物?

彼女は冗談で云ったつもりだったが、何も言い返して来ない彼を見てあながち的外れではなさそうだと感じた。まさかの展開にジョディのテンションはみるみる上昇していく。

「え、もしかして本当にそうなの?相手は誰?!どんな子?」
「おい⋯勝手に話を飛躍させるな。俺はまだ何も言ってないぞ」
「聞かなくったって分かるわよ!」

ジョディは素直に嬉しかった。宮野明美を失ってから彼はずっと孤独という名の殻に閉じこもったままでいる様な気がしていたから。新たな恋がうまくいくかどうかは別として、今はただその見知らぬ存在に感謝した。

「隠さなくてもいいじゃない!とっても素敵なことなんだから」
「別に隠してなどいない」
「だったらどんな子なのか教えなさいよ!」

相手はフリーなの?歳はいくつ?
次から次へハイテンションで質問攻めにされ、赤井は一気に疲労感が増した気がした。しかし何かしらの返答をしなければ彼女は引き下がらないだろう。この騒ぎが長引くのも厄介だと思い、当たり障りのない程度に返事をする。

「フリー、ではないな。年齢は⋯俺より下で一回りほど差がありそうだが」
「そうなの?いきなり前途多難ね⋯」

ああ、前途多難だ。何せライバルがあの男『ジン』なのだから。よりにもよって愛しい宿敵(こいびと)の恋人に惚れてしまうとは⋯これは大きな誤算だった。だがこれもまた運命か、とどこか納得している自分がいるのも事実。

「だけど、あなたは優秀なスナイパー。狙った獲物は確実に仕留めるんでしょう?」

例えどんな状況であっても。
ジョディの言葉を聞き、赤井は何かを決意したかのように不適に笑って見せた。

「今度はフラれないようにしっかりやりなさいよ」
「フッ⋯そうだな」

やるからには正々堂々と。
まずは宿敵への宣戦布告から。

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※ものかきさんに100のお題。「ルーレット」より
2014/8/21