04:嘘じゃないならせめて夢だと言ってくれ

「次同じことやったら本気で警察に通報しますからそのおつもりで」
「フン…やれるもんならやってみろ」
「少しは反省して下さい」
「お前の貧相な裸体なんざ見たところで何とも思わねぇよ」

時は30分程前に遡る。珍妙な出来事のせいで20時どころか気が付けば時刻は22時になろうとしていて。仕方なく今日はシャワーで済ませようと思い、上服を脱いでブラジャーのホックを外そうとしたところで唐突に脱衣所の引き戸が勢いよく開け放たれた。

『おい女…この家に酒と煙草はあるか?』
『……』
『どうなんだ』
『た…煙草はないですけどお酒なら冷蔵庫の中に缶ビールが何本か、』
『そうか』

用は済んだとばかりに引き戸は閉られ、彼はその場を立ち去った。あまりに唐突過ぎる事態に悲鳴をあげる暇もなく、瞬きを何度か繰り返したのみで終了。しかしながら、明らかに彼の行動は常軌を逸している。

「―まぁ、貧相なのは認めますけど」
「ククッ…認めるのか」
「グラマーな体型じゃないのは自覚済みです」

言いながらすでに2本目のビールに口を付けようとしている彼を尻目にキッチンに立つ。さすがにこの時間からまともな食事を作る気にはならず、戸棚からインスタントラーメンをいくつか取り出した。あっさりした塩味が食べたいけれど生憎品切れ中で仕方なく醤油味を選ぶ。

「今からラーメン作りますけど食べます?」
「……」
「要るんですか?要らないんですか?」
「…いらねぇ」
「そうですか」

確かにあのジンがラーメンを啜ってる姿なんて想像がつかないし、これ以上勧める理由も特にないので自分の分だけを調理する。適当に乾燥わかめと冷凍の刻みねぎを器に放り込んであっという間に完成。

テーブルに運び、食べ始めてから暫くすると。

「お前…いつもそんなもん食ってんのか」
「まさか。今日は突拍子もない事が起こって時間が無くなったので仕方なく」
「仕方なく、という割には冷蔵庫にも碌な食材は入っていなかったがな…」
「それこそ余計なお世話です」

早く元の世界に帰ればいいのに、と心の中で毒吐きながら早々に食事を終えて明日に備えて就寝の準備に掛かる。歯磨きをして、朝食用のご飯を予約タイマーでセット。仕方ないので掛け布団の代わりになればと彼用にブランケットも用意する。
相手はサイボーグの様な男だけれど一応怪我人だし、一晩くらいならベッドを譲ってあげてもいいかなと考えていた。ところが例の覗き事件が発生したため、彼に気を遣う事は今後一切しないことに決めた。

「良かったらこれどうぞ。怪我人とはいえ、覗き魔にベッドまで提供する程お人好しにはなれませんのでそのままソファで寝て下さい」
「……」
「洗面所に新品の歯ブラシやタオルも用意してます。シャワーやトイレもご自由に」
「…おい、」
「それじゃおやすみなさい」

彼が何か言いたげにしていたけれど遮るようにしてその場を立ち去り、自室のベッドに潜り込む。明日目が覚めたら何もかも夢だったのだと笑えればいい。私はそう願いながら即、瞼を閉じた。

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お題配布元:fynch
2016/6/27