17:神様、もう少しだけ。
※番外編夢主意識trip続き
少しだけ汗をかいたグラス。
アイスティーの中に浮かんだ氷がカラン、と涼しげな音を立てた。
「こんな時間にジンとカフェでお茶してるなんて、なんだか夢みたい」
「さっきの水族館にしろ随分大袈裟だな⋯お前は」
「そうかなぁ?人目を気にしないで堂々と、なんて初めてだもん」
そういえば、司法取引が成立して釈放された後に買い物に出掛けた際も彼女はそんなことを言っていた気がする。もしも目の前の彼女が別の時間軸からやってきた意識だと仮定して、元の世界に戻った後はどうなるのだろうか。組織が未だ存続している状態だとすれば⋯。
「お前は⋯どっちが幸せなんだ」
「ん?」
「組織に属している俺と属していない俺⋯仮に選択できるとしたら、どちらを選ぶ」
ある意味残酷な問いだということは重々承知していた。だが、ジンは聞かずにはいられなかった。
「そんなの選択するまでもないよ。組織に属していようがいまいがジンはジンで、私はジンと一緒に居られるだけで幸せだもん」
名前は躊躇なく答えた。
勿論こんな風に堂々とデートができる日常を送れたらそれはとても幸せな事だと思う。けれど己自身は“ジン”と結婚して、最高に幸せな日々を送っていることも事実。
「じゃあジンは、どうして“私”と結婚しないの?」
「⋯っ、」
唐突な問いかけに、今度はジンが驚愕する番。動揺を悟られないように口に運んでいたカップを静かにソーサーに戻した。
「まさかお前の口からそんな質問が飛び出すとはな⋯」
「私も、普段なら絶対言わないし聞かない事だからちょっとドキドキしてるけどね」
ジンはジン、名前は名前。
けれど無意識に“本来知っているものとは別の人格”という意識が互いに働いているせいか⋯今なら様々な想いをストレートに口にできる気がしたし、好奇心も勝った。
「まあ⋯正直に云えば、少々迷いもある」
「迷い?」
「身寄りがないとはいえ、犯罪者の十字架を背負わせることになるからな⋯」
「ふふ、」
「⋯何が可笑しい」
「ううん。やっぱりジンはジンだな〜って思っただけ」
「⋯⋯」
「私が知ってる“ジン”もね、結婚する前にまったく同じこと言ってた」
どこまでいっても私は彼にこれほどまでに愛されているのだと改めて思い知らされる。
「でもそんなこと云ったって“私”を手放す気はないんでしょう?」
「クッ⋯それはそうだな」
「大体今更そんなこと気にするくらいなら、とっくに離れてるよ」
「⋯?」
「未だに詳細は話してくれないけど、ジンが世間に顔向けできるような仕事はしてないっていうのは出会った当初から何となく察してたし」
「⋯⋯」
「それを分かってて私もずっと一緒に居たし、これからも居るんだもん。正義を掲げる人達にとってみたら私もすでに善良な一般市民の枠からは外れてるだろうし」
見て見ぬ振りをして、ジンの言葉に甘えて守られて。
白にも黒にもなりきれぬ自分。
しかしいつの日か、完全に黒に染まらねばならない日が来たとしても私は絶対に後悔しない。人殺しなんて物騒な真似は絶対にできないけれど、ジンと共に堕ちていくことに一切の迷いはない。名前は真剣な眼差しでジンに言って聞かせた。
「だから本当にびっくりしたんだよ?ジンがFBIの人達と一緒に働いてるなんて」
「別に好きでつるんでるワケじゃねえ⋯」
「まぁそれはそうだろうけど。でも“私”がこうして今まで通りの生活を送っていられるっていうことは、ジンやFBIの人達が守ってくれたからなんでしょう?」
「⋯⋯」
「なんか、いつも守られてばっかだなぁ⋯私、」
「お前はそれでいい。何も考えるな。お前らしく、ただ真っ直ぐ生きていればいい」
「⋯うん。ありがとう」
ジンの言葉に思わず涙腺が緩みそうになる。
早く、私の知っている“ジン”に会いたい。
けれど今はもう少しだけ⋯目の前のジンに甘えても、いいよね?
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2015/5/31
少しだけ汗をかいたグラス。
アイスティーの中に浮かんだ氷がカラン、と涼しげな音を立てた。
「こんな時間にジンとカフェでお茶してるなんて、なんだか夢みたい」
「さっきの水族館にしろ随分大袈裟だな⋯お前は」
「そうかなぁ?人目を気にしないで堂々と、なんて初めてだもん」
そういえば、司法取引が成立して釈放された後に買い物に出掛けた際も彼女はそんなことを言っていた気がする。もしも目の前の彼女が別の時間軸からやってきた意識だと仮定して、元の世界に戻った後はどうなるのだろうか。組織が未だ存続している状態だとすれば⋯。
「お前は⋯どっちが幸せなんだ」
「ん?」
「組織に属している俺と属していない俺⋯仮に選択できるとしたら、どちらを選ぶ」
ある意味残酷な問いだということは重々承知していた。だが、ジンは聞かずにはいられなかった。
「そんなの選択するまでもないよ。組織に属していようがいまいがジンはジンで、私はジンと一緒に居られるだけで幸せだもん」
名前は躊躇なく答えた。
勿論こんな風に堂々とデートができる日常を送れたらそれはとても幸せな事だと思う。けれど己自身は“ジン”と結婚して、最高に幸せな日々を送っていることも事実。
「じゃあジンは、どうして“私”と結婚しないの?」
「⋯っ、」
唐突な問いかけに、今度はジンが驚愕する番。動揺を悟られないように口に運んでいたカップを静かにソーサーに戻した。
「まさかお前の口からそんな質問が飛び出すとはな⋯」
「私も、普段なら絶対言わないし聞かない事だからちょっとドキドキしてるけどね」
ジンはジン、名前は名前。
けれど無意識に“本来知っているものとは別の人格”という意識が互いに働いているせいか⋯今なら様々な想いをストレートに口にできる気がしたし、好奇心も勝った。
「まあ⋯正直に云えば、少々迷いもある」
「迷い?」
「身寄りがないとはいえ、犯罪者の十字架を背負わせることになるからな⋯」
「ふふ、」
「⋯何が可笑しい」
「ううん。やっぱりジンはジンだな〜って思っただけ」
「⋯⋯」
「私が知ってる“ジン”もね、結婚する前にまったく同じこと言ってた」
どこまでいっても私は彼にこれほどまでに愛されているのだと改めて思い知らされる。
「でもそんなこと云ったって“私”を手放す気はないんでしょう?」
「クッ⋯それはそうだな」
「大体今更そんなこと気にするくらいなら、とっくに離れてるよ」
「⋯?」
「未だに詳細は話してくれないけど、ジンが世間に顔向けできるような仕事はしてないっていうのは出会った当初から何となく察してたし」
「⋯⋯」
「それを分かってて私もずっと一緒に居たし、これからも居るんだもん。正義を掲げる人達にとってみたら私もすでに善良な一般市民の枠からは外れてるだろうし」
見て見ぬ振りをして、ジンの言葉に甘えて守られて。
白にも黒にもなりきれぬ自分。
しかしいつの日か、完全に黒に染まらねばならない日が来たとしても私は絶対に後悔しない。人殺しなんて物騒な真似は絶対にできないけれど、ジンと共に堕ちていくことに一切の迷いはない。名前は真剣な眼差しでジンに言って聞かせた。
「だから本当にびっくりしたんだよ?ジンがFBIの人達と一緒に働いてるなんて」
「別に好きでつるんでるワケじゃねえ⋯」
「まぁそれはそうだろうけど。でも“私”がこうして今まで通りの生活を送っていられるっていうことは、ジンやFBIの人達が守ってくれたからなんでしょう?」
「⋯⋯」
「なんか、いつも守られてばっかだなぁ⋯私、」
「お前はそれでいい。何も考えるな。お前らしく、ただ真っ直ぐ生きていればいい」
「⋯うん。ありがとう」
ジンの言葉に思わず涙腺が緩みそうになる。
早く、私の知っている“ジン”に会いたい。
けれど今はもう少しだけ⋯目の前のジンに甘えても、いいよね?
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2015/5/31