09:振り返れば、夜

「今日だけはジンさんが神に見えます」
「くだらねぇことほざいてないで集中しろ」

急遽、割り当てられた(押し付けられたともいう)研修用の資料作り。これまでずっと主に経理を担当してきた名前にとってこの作業は不慣れなこともあり予想通り難航。けれど通常業務も当然ながら疎かにすることはできないので、今夜は泣く泣く仕事を家に持ち帰ってきたのだ。

「3、7、10、16、23Pに変換ミス。18Pの育児休業と無期転換についての記述も訂正が必要だ。この項目については昨年法律が変わっている」

資料を作る上で参考に、と会社から渡されたパンフレット。ラインマーカーで該当箇所をぐるりと囲んでジンは差し出した。

「ああ⋯もう疲れた⋯。残りは明日に、」
「多少の疲労で後回しにするな。あと少しで片付くだろうが」
「⋯さっきの『神』発言は取り消します。ジンさんは悪魔、若しくは鬼です」
「なら此処から先はお前一人でやれ」
「あー嘘です嘘です!ジンさんは神様です!!」

調子のいい名前に呆れつつもジンは席を立つことなく、先程印刷したばかりの資料にも目を通していく。

「ジンさんって事務仕事もいけるんですね。ドンパチやるだけじゃなくて」
「余計な世話だ」
「あんな危ない仕事しなくても普通の会社員として充分やっていけそう」
「死んでもご免だな⋯」
「まぁ私もジンさんみたいな人が同僚や上司だなんて死んでもごめんですけど」
「名前⋯死にてぇか」

ギロリと睨まれるも慣れとは恐ろしいもので名前はどこ吹く風。気づけばこんな軽口も平気で叩けるようになっている事が可笑しい。

「明日はお礼に何かお酒でも買って帰ってきます」
「酒か⋯悪くねぇ」
「ウイスキーでいいですか?」
「ああ」
「スコッチ?バーボン?それともライで?」

わざとらしくニヤつきながらそう口にした名前に、ジンは横から彼女の耳を力強く摘み上げた。

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お題配布元:Cock Ro:bin
2018/4/25