talking to myself

2025.11.01(Sat)

*金木犀:鯉登夢/少尉と本州if

甘くも爽やかな香りがふわと香る。人の多い表通りを避け、裏道へ入ってすぐのことだった。自分より先に彼女が辺りを見回す。民家に植えられた木を見つけると、嬉しげに駆け寄って行った。「いい匂い」踵を上げて顔を寄せる。自身も隣へ立って彼女に倣う。オレンジの小さな花が風に揺れた。彼女の頭上から、いくつもの花がほろほろとこぼれ落ちる。このときを待っていたかのように。結った髪が飾られる様子をしばらく眺める。「北海道でも咲けばいいのに」恨めしそうな声音に頬が緩んだ。「ね?」首を傾けたその拍子に、花がひとつ、髪をすべり落ちる。不思議そうに空を見上げる彼女。「ふふ、綺麗な髪飾りがついているぞ」慌てて頭へ伸ばす手を、己のそれで静止する。「このままではダメか?」惜しく思い言うと、いいですけどといたずらっぽい笑みが返ってくる。「鯉登少尉も、そのままでいてくださいね?」上がる視線に、彼女同様であろう己の姿を悟る。交わす笑みを、金木犀の香が包んでいた。

That’s all.
ss

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