*小説 info アネモネ


プロローグ

真っ暗闇だった。
なんにも見えない。そのなかでぽつりと呟いた。
「あのね、れー、煙草って大好きなの」
見えなくても分かる、多分側にいる彼は困ったような顔をしているんだろう。
「またそんなこと言って…」
暗闇の中から声が返ってくる。
それがあおの声であることは分かっている。
とても楽しかった。
楽しくて、れーは思わずクスクス笑う。
「次は何を買おうかなぁ…可愛いのもいいなぁ。女の子のピンクのも可愛いよね、味しないけど」
「俺に聞かないでください…」
困ったような声に、ふふっと笑う。
「程々にして下さいね」
「知ってるよ、体に悪いもんね」
そう言って笑うと、それっきり静かになった。