懐かしい声

部活初日だというのに、日向翔陽と共にキャプテンに体育館を閉め出されてしまい、どうすればいいものかと頭を捻るが何も解決策は浮かびはしない。どうしてこんな目に合わなければいけないんだ。イライラは募るばかり。


「あれ?飛雄?」


久しぶりに聞いたはずのその声。誰のものかなんて考えることもなく浮かぶ顔に急に緊張が高まった。

「……綾人さん」


声の方へ顔を向ければ、面影はそのままに、俺が言うのもなんだけどあの頃より大人びた姿。綺麗な赤い髪。目にぎりぎりかかるくらいの前髪を首を振って斜めに分ける癖はそのままだ。でも中学の頃より横と襟足は短くなってる気がする。涼しい顔でふわりと微笑みながら俺の方へ歩いてくる。綾人さんのことを、俺は正直苦手だ。


「飛雄も烏野なんだ、またよろしくね」
「はい、綾人さんがいるとは思いませんでした」
「あれ?言ってなかったっけ?」
「聞いてません」
「そっかぁ。まぁ飛雄、俺のこと苦手だもんね」
「……!そん、なこと、ないです」
「嘘下手か。でもいいよ、俺は飛雄のこと可愛いと思ってるし」


そう言いながら俺の頭を撫でる綾人さんの目は、やっぱり全て見透かされているような気がして苦手だ。
俺を通り過ぎて次は日向の元へ。


「君も1年?」
「はい!!日向翔陽です!!」
「翔陽。俺は光川綾人、よろしく」


体育館の扉を開けて中に入る綾人さん。扉をそのままにしてくれていたけど、キャプテンに思い切り閉められてしまった。


「……イケメンだ」
「は?」
「綾人さん、イケメンだ」


確かにイケメンだとは思うけど……そんなことよりもあの人は頭がいいから、俺の見栄も、意地も、嘘も、全て見抜かれてしまいそうで。
昔からそうだ。綾人さんに会うと緊張からなのか身体が熱くなって、心臓がばくばくする。ほら、今もだ。またこれからそんな日々が続くのかと思うと少したじろいだ。