複雑な心

IH予選前日の練習も終わり、解散かというところで清水先輩と先生が何かの準備を始めて、部員全員、3年生までも「?」を浮かべている。「せーの」という掛け声と共に見えたのは、「飛べ」。そして、



「……が、がんばれ」

絞り出すように発した激励の言葉に一斉に涙を流す2、3年生。主将も、普段うるさい田中さんや西谷さんも。


「綾人さんが静かに涙を流している」
「泣いてる姿まで絵になるとか……」


単純に美しいと思った。その姿に見惚れてしまって、俺は視線を外せなくなった。それはまた俺の知らない綾人さんだった。悲しいような嬉しいような複雑な気持ちだ。それと同時にまた身体が熱くなった。


「影山なんか顔赤くね?大丈夫か?」
「は?赤くねぇよボケ」


いや、確かに赤いと思う。ごまかせるはずもないのに悪態をつく。やっぱり俺、綾人さんを見るとおかしくなる。考えると眠れなくなる。それって、そういうことだよな……