その気持ちの名前

潔子からの激励もあっていい雰囲気で明日に望めそうだ
。感謝しなくては。
帰り道、みんなと分かれたところで、後ろから名前を呼ばれる。


「飛雄、どうした?」

振り向いた先には、もじもじと視線を泳がせて、伝えたいのに言葉に出来ないといったところだろうか。ひどく戸惑っている様子の飛雄。


「綾人さん、あの……えっと、なんていうか」
「ゆっくりでいいよ」


不器用な彼がこんなにも必死に何かを訴えかけようとしてくるのは多分初めてだ。そんな飛雄がきちんと言葉に出来るように、俺はひたすら待つ。


「あの、綾人さんのこと苦手だけど、でももっと綾人さんを知りたい。俺、多分好きなんだと思います。綾人さんのこと」


何回俺の名前を呼ぶんだ、と可愛くて笑いそうになったけど堪える。でもその矛盾した言葉を少しからかってしまいたくなって。


「苦手だけど好きなの?」
「……えっと、それは」

またおどおどと思考を繰り返す飛雄に、ついに今度は頬を緩めてしまうのを抑えきれなかった。


「大丈夫、全部わかってるよ」
「……え?」
「俺も好きだよ、飛雄」
「本当ですか……!」

ぱぁっと顔色を明るくするもんだから、思わず抱きしめてしまいそうになった。必死に理性で抑えて、でも差し出した手を引っ込めることは出来なくて、繕うようにその頭を撫でる。


「うん、だからもっと俺のことを知ってほしい」
「うっす、教えてください!」
「だけどその前に……明日、勝とうね」
「はい!」


純粋な飛雄。今はまだ、「憧れの先輩」でいてあげる。俺を“好き”なことに気付いてない飛雄に、気付かないふりをしてあげる。


( 1部 完結 )