「そんなことがあったんですね……」
静かに相槌を打ちながら話を聞いてくれていたテッちゃんが一言呟いた。
眉間にしわを寄せ、眉毛を下げながら、まるで自分のことのように辛そうな顔をしている。
「ごめんね、くだらないでしょ」
繕うように明るい声を出し笑顔を作る。少し声が震えたけどテッちゃんなら気付かないふり、してくれるよね。
「くだらなくなんかないです。大好きなことが出来なくなる辛さを想像するだけで怖くなります。それに……」
静かに、だけど芯のある声でテッちゃんは俺に思いを伝えてくれようとする。
「お兄さんの気持ちに寄り添える橙田君は、とても優しいです」
驚いた。このことを打ち明けたのはテッちゃんが初めてだったけど、それでもこの話を聞いて「優しい」と言われるなんてまさか思っていなかった。そもそもなぜ優しいのか、俺は臆病なだけだ。逃げているだけ。
「お兄さんの痛みを自分の痛みのように感じるからこそ、橙田君はチームに属さないんですよね?誰かの痛みでそこまで行動が出来る橙田君はすごいですよ。ただ……ボク自身としてはもっと自由に橙田君の人生を歩んでほしいとは思います。もちろん、強要はしません。ボクの願いです」
自由に、俺の人生を……
まだ出会って数ヶ月の俺にそんなことを言ってくれるテッちゃんの方がよっぽど優しい。
自分自身、自由に生きているつもりだったけど、もしかしたら囚われていたのか……?
感情がぐちゃぐちゃになって目に涙が溜まる。鼻の奥がツンと痛んで、気付けばそれはぽろりと落ちる。
ひとつ落ちれば止まらなくなって、声を押し殺して泣いた。テッちゃんが頭をふわりと撫でてくれて、その手から伝わるぬくもりが余計涙を止まらなくさせた。