もしも青葉城西だったら


「金田一、名前さんのこと見すぎ」


国見にそんな指摘をされて、「仕方ないだろう名前さんなんだから」なんて我ながら意味のわからない返答をする。
名前さんは尊敬するミドルブロッカーで、所謂俺の憧れの人である。中学の時からずっとそうだ。俺が青葉城西に入ったのも、少なからず名前さんの影響もある。もちろんそれだけではないけれど。


烏野との練習試合を終えて、部室で着替えている時、急に思い出したように花巻さんが言う。


「そういえば名前、烏野のチビちゃんに“大魔王様”って呼ばれてたぞ」


その一言で部室はその話題で持ちきりとなる。三年生がすかさず名前さんを茶化す。


「ちょっとチビちゃんおもしろすぎ!」
「徹だって大王様って呼ばれてたじゃん」
「魔王よりはよくない?」
「待って俺悪役ってこと?」


名前さんといえば、頭が良くて、策士で、周りのことをよく見ていて、ちょっとの変化も気付いてくれる。
中学の時も、今も、主将は及川さんだけど、裏でチームを動かしているというか、なんというか……


「大魔王様ってわからなくもない……」
「ちょっと勇太郎俺のことディスってる?」
「いや!違うんですそうじゃなくて……!」


つい口走った一言を弁解するけど、みんなが「確かにな」なんてしみじみ言うから全然意味がない、フォローになってない。
やいやいと先輩達が好き勝手話す中心にいる名前さん。決して自ら盛り上げたり騒ぐようなタイプではないのに、気付けばその場の主役になっている。それは普段も、コートの中でも、だ。
俺はいつか名前さんのようなミドルブロッカーになれるのだろうか。そして名前さんのような先輩になれるのだろうか。


「だから金田一、名前さんのこと見すぎだって」
「仕方ないだろ!だって名前さんなんだから!」
「ほんっと昔から好きだよなぁ」

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