夢に向かう

進路指導室。将来の話をする大切な面談。目の前に座る先生は、真剣な表情で語る。

「光川の成績なら志望校はA判定だ。ただ、油断は禁物。わかるね?」


はい。と返事をしながらも、きっと俺を説得するために先生はここにいるのだろうと思うと、どう伝えるのが良いのか。正直に言うしかないけれど、でも人対人なんだから伝え方ひとつで先生と俺の関係性も、バレー部に対する見方も、色々なものがきっと変わるだろう。円満である方が良いに決まってる。


「光川の将来を考えると、部活に残るより今きちんと勉強して確実に第一志望に合格する方が光川のためだと思う。いっときの感情で部活を優先するべきではないと思うが」
「先生、俺は」


大人からしたらそれが最善だと言うだろう。もしかしたら、先生でなくとも、大人でないとしても、スタメンではなく怪我をしている俺が部活に残るという選択を良しとする人は少ないのかもしれない。それでも、


「俺の夢は日本代表の指導者になることです。そのために体育大学に行きます。春高まで残って、少しでも多くのプレーを見て、経験して、知識を蓄えることは、俺にとっては有益な時間です。夢を叶えるための手段の一つです」
「……しかし、」
「だから、俺は、春高まで残って、あいつらと一緒に全国へ行きます」


子供のわがままだと言われてもいい。やらずに後悔するなんて絶対に嫌だ。勉強だって練習だって、両立させればいい。効率を上げればいい。それが大変でも辛くても、自分が選んだ道ならやり遂げられる。そう信じて今は突き進むしかない。