そうしてふえていく
どれだって写りの悪いデータを右へ右へとフリックすると、自然と口元が緩む。誰かが持ってきてくれたちょっといいクッキーを目線の高さまで持ち上げてじっと見つめながら口を半開きにしている顔、名前を呼ばれてハンディモップをかけながら振り返るきょとんとした表情、話を聞き流しながら両手で頬杖をついてもにもにと自分の頬を暇つぶしに触っている無表情。笑顔もピースもなにもなくても、自然とその時の状況を思い起こさせるこの写真たちが好きだ。
「はとはらぁ」
「んー?」
呼ぶと、こちらを見ないまま気のない返事。唇にシャーペンを押し当ててノートを開いている横顔に、「みてこれ」と端末をむける。
「なになに」と言いながら覗き込んだ鳩原は苦笑して、「なにこのまぬけ顔は」と言った。
「消してよ」
「やだよ。おれの大事な鳩原ちゃんコレクションだよ」
「趣味わるっ」
「ほらみて」
「多っ。趣味わるっ」
ようやくこちらを向いた視線を独り占めして、犬飼は笑った。
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