彼女の部屋で見知らぬゴムを見つけた◎

黒尾
「〇〇サーン、これはなんですかあ?」……これは面倒くさいタイプの鉄朗だ。「何よてつろ―……は?なんで持ってんの」「んなのゴミ箱の一番上に捨ててあったら気付くだろ」あーバカをした。鞄を整理したときに出てきたソレは私の中でただのごみでしかなく、彼に見つかったらまで考えが及ばなかった。「で、俺らこれ使ったことないよね?何これ浮気?」「違う。整理した時に出てきた昔の鞄に入ってたゴミ」「未使用だけど」「未使用のゴミ」ゴミだろ、いつのかわからない元カレの時のなんてもうゴミ以外の何物でもない。鉄朗だって元カノと経験あるだろうに。ただ見つかってしまったのはまずかった。どうしよう。「ま、浮気してるなんて本気で思っちゃいないよ?」「思われたら困る」「でもさ、元カレと使ってた物を見せられるのも生々しいわけで」「それは大変申し訳ございませんでした」「媚薬入りなんて使ってたんだーって思ったらなんか」「……っ」「俺の知らない顔を元カレは知ってるのかって複雑な気持ちになったりして?」じりじりと追い詰められ、背中には壁。「ご、ごめ…んっ」顎を掬われ、謝罪の言葉を飲み込むように唇を塞がれる。「今夜、同じようなの買って来るからイイ子にしてろよ?」今日イチの笑顔を見せる彼からはもう逃げられない。



孤爪
「……」「研磨お風呂いいよ」「………」何かを調べているのか、スマホの画面を見たまま反応しない。「けーんま?」と、後ろから覗くと「……ちょ、え、なんで」どうせ使わないし捨てなきゃなと思っていたものを彼が持っていて、そして銘柄を調べられるというコンボをお見舞いされた。振り向いた研磨の表情はあまり変わらないけど、明らかに怒っている。「何、コレ。なんでこんなの持ってるの?見たことないやつだし、しかも箱じゃなくてひとつしかないし。使いかけなの」「ま、待って説明する、から」怒ると饒舌になる彼に冷汗を流しながらストップをかける。「使いかけのラスいちでもないし、元カレと使ったのでもない」「じゃあなに」こんな状況だけど、むすっとしている研磨は可愛い。「友達がね、もちろん女性だよ。使わないから試しにって……捨てようと思ってすっかり忘れてた。だから捨てるね?」笑って誤魔化し研磨の手から取ろうとしたが、すっと避けられた。これはまずい。「……よかった、元カレでこんなえっちなこと覚えたのかと思った」「!?」「今日はコレ、使ってみようか」先程とは打って変わって楽しそうな顔。「〇〇がどんな反応するのか、楽しみ」じゃあシャワー浴びてくるね、と頬にキスをし浴室へ向かった。私に捨てられないよう、ソレを持ったまま。(媚薬 対策……で、検索)



赤葦
「〇〇さん、ちょっといいですか」「え、なに、何怒ってるの京治」恐らく漫画だと背景に効果音がついているであろう圧をかけてくる彼。身に覚えがありすぎてどれに怒ってるのか見当もつかない。「ごめんなさい、京治のアイス食べました」「今そんなことはどうだっていいんです」どうでもいい!?じゃあなに、なんのこと……。「……浮気、とかしてないですよね」「へ?」全く予想もしていなかった言葉に心の底からのへ?が出てしまった。浮気?私が?「心当たり全然ないんだけど……」「じゃあ元カレとの物ですか?」そう京治が差し出した1つのソレは捨てようと思ったのにどこに置いたか忘れ、そのまま記憶から抹消されていたもの。なんと、媚薬入りゴムなのだ。ただ京治が言ってる浮気でもなければ、元カレとの物でもない。「それ、京治に頼まれて通販でゴム買った時あったじゃん。その時試供品でついてきたやつ……」こんな怪しいもの使われてもなあと、捨てようとした時にはどこに置いたか忘れていたと正直に答えた。「―……よかった」瞬間、気が付いたらすっぽりと彼の腕に包まれていて。鼓動の速さも、ぎゅうと力が入っている腕もその気持ちが直に伝わってくる。「俺じゃない人と、使ったのかと思ったらムカついてしまって……ただの嫉妬です」「か、勘違いさせてごめんね?」「大丈夫です、ただその代わり」なんだか嫌な予感がする。「今から、効果試してみましょうか」そう耳元で囁く彼の顔は、きっといい顔で笑っているだろう。




「なんやお前ふざけとんのか!」「はぁ?私の耳かきに文句言うなアホ!」耳かきの場所を教えただけなのに、前触れもなく怒るから反射的にキレ返してしまった。「ちゃうわ!お前浮気でもしとるんか!」耳かきの場所教えたら浮気?なにがどう浮気に結びついたのかわからず混乱する。「これ俺知りませんけどー」「なっ……なんでそれ」なおも怒りながら目の前に出されたのは、使うことはないだろうとすっかり忘れていたゴム。耳かきのところに放っておいた当時の私を恨む。こんなことになるのなら、帰ってきてすぐに捨てればよかった。侑に見つかったら絶対面倒なことになるってわかってるのに。「動揺すんなや、ほんまに浮気か?」「それは絶対ない」「じゃあなんで1つしかないん」言いたくない、展開が読めるから言いたくない。けど浮気だと思われるのも嫌だ。言うしかない、か……。「と、友達が」「おん」「媚薬入りの面白半分で買ったからって、女子会でみんなに押し付けてたやつ……」「へぇ……ほんまやろな?」「こんな嘘ついてどうすんの」「せやな」「……ちょっ!?」腕を引かれぐるりと視界が反転し、有無を言わさず押し倒される。「ほんならすぐにでも試してみよか、コレ。どんな反応見せてくれんやろな?」獲物を捕らえたような目で舌舐めずりする彼を前に、もう逃げられないことを悟った。