及川
ふと目が覚めるとまだ暗く、スマホを確認すると深夜だった。視線を落とすと私の胸に顔を埋め寝ている徹の姿がある。起きている時はくるくると表情が変わる彼も今は気持ち良さそうに寝息を立てている。それだけなのになんだか無性に愛おしくなって、抱き締めている頭を優しく撫でた。三十センチ以上もある身長差で徹のつむじを見ることなんて寝ている時くらいで、ましてやこんなにすぐ近くで頭を撫でてあげられることなんてそうそうない。「……んは、徹かーわいい。好きだよ」そっと髪に口付けをすると「ん゛んっ」と声が漏れるのが聞こえた。「……徹?」「待ってよ、そんなの寝てる時に言うなんて狡いじゃん」「ちょ、起きてるなら言ってよ、恥ずかしいから」「俺が起きてる時にも言って欲しいなぁ」しゅんとしながら上目遣いで見上げる、こういう時の徹は本当にあざとい。多分岩ちゃんなら引っ叩いてるだろうけど、これも惚れた弱みだ。私はめっぽう弱い。「……絶対いや」そう言いながら顔を上げまいと徹の頭に顔を埋める。「……そういう子にはーこうだ!」「わはっ」突然わき腹をくすぐられ、徹から手が離れる。そしてその隙に彼の大きな手で頬を包まれ唇を塞がれた。「俺もいつも思ってるよ、きみが好きだって」そう真剣な顔で言うものだから私の彼氏は"可愛い"ではなく"かっこいい"だと、再認識した。
黒尾
明日珍しく早起きだと言っていた彼は早々に布団へ潜った。私はゲームをしてから寝るのが日課なのでいつも大体同じ時間に寝室へ向かう。そっと入るともう彼はぐっすり眠りについているようで、布団に入ってもその寝息が乱れることはない。「口を開かなきゃただのイケメンだな」心の中で笑いながら彼の髪に手を伸ばす。しゃっきりとした髪型は、セットしてるかと思いきや、まさかの寝ぐせだったことを知った時は衝撃的が走った。でも今は寝ぐせがつく前で、触るとふわふわしている。「きれいな顔」するりと頬を撫で、まじまじと近くで見る。普段はこんなこと恥ずかしくて出来ないから、彼が寝てる時の特権だ。思う存分見たところで、もぞもぞと布団に潜った。「もう満足?」突然彼の声が聞こえたと共に背中へと腕が回され抱き締められる。「なっ、いつから起きて……」「布団に潜ってきた辺り」「最初からじゃん」「あまりにも可愛くてね、起きるタイミング見失っちゃいまして」「……はっず」「まぁ俺もね?寝てる間に撫でたりキスしてるから、お互い様ってことで」「……え?」「じゃあおやすみー」爆弾を投下しおでこにキスをした後、私を抱き締めたまま彼はまた眠りについた。私はもう暫く眠れそうにない。
孤爪
ふと目が覚め、寝ぼけまなこでスマホを確認すると寝てからまだ三時間程しか経っていなかった。反対側を向くと研磨も眠りについていてレアだ、なんて思ったり。私より先に寝ることは殆どない彼の寝顔を、朝はよく見るがこんな夜中に見れることは滅多にない。よく寝てるななんて頭に手を伸ばし、学生時代より少し伸びた髪を指で梳く。これといってケアしているわけでもないのに、さらりとしていて羨ましい。起きないのをいい事に、彼の頭を撫で頬に唇をおとした。「ふふ、可愛い。おやすみ」そうしてまた布団に潜ろうとしたその瞬間、突然手首を掴まれる。「んえ!?」「ちょっと……それは狡いんじゃない」さっきまで寝ていた筈の彼が、不貞腐れたような表情でこちらを見ていた。「ね、寝てたんじゃないの」「……寝てると思った?」一体いつから起きていたのか皆目見当もつかない。「可愛いってなに」「そのままの意味、です……」「ふーん、きみがその気なら」彼は上半身を起こし覆い被さるようにして私のおでこ、瞼、頬と順番にキスをし、唇を塞いだ。「おれにも、満足するまで触らせてよ」目を細め意地悪く笑う彼には、可愛さなんて微塵もなくて。もう夜中の猫は起こさないと、そう決めた。
侑
「ぐ〜……」「……」むくりと起き上がると珍しく彼がいびきをかいていて、その音に起こされた。ぼやぼやした頭で彼の方を見るも、こっちの気も知らず気持ち良さそうに寝ている。誰に起こされたと思ってるんだ、そう思いながらぺしっとお腹を叩くも起きる気配はない。……かった、待って腹筋硬すぎじゃない?思わず自分のお腹と比べてみるも雲泥の差だ。今まで特に意識したことはなかったけれど、改めて触ると筋肉がものすごく硬い。鼻をつまんでみたが、ふがっと言うだけでいびきは止まったが起きない。……もう少しだけ、と腹筋を撫でてみた。普段はアホなところばかり目がいくけど「かっこいいんだなぁ私の彼氏」とこの腹筋により再確認する。夜中に起こされた代償だと思う存分触った。「はー侑の腹筋やばすぎ、寝よ」「そのまま寝るんか?」「え」完全に安心しきってた矢先話しかけられて口から心臓が出るかと思った。「あ、つむ……」「人の腹撫でくり回してそのまま寝るんか言うとるんや」「……これは侑にいびきで起こされた代償です」「いびきしとらんわ」「してたわアホ!」「でもあんなやらしー手つきで撫でまわして、そのまま寝れると思うてへんやろな」「寝れ……は?」「付き合うてもらうで」逃げる間もなく侑は馬乗りになり、噛みつくようなキスをした。