治
お!おにぎり宮の店主の服がある。なんとなく着ちゃいけないような気がして貸してとも言えずにいた着替えのシャツが彼の部屋に放置されていた。治は明日の仕込み中、このチャンスを逃すまい。シャツとエプロンをつけてみると、サイズが大きいためワンピースみたい。ズボンは流石に下がってきて無理だったから割愛。……これ着て仕事してるんだな、かっこいい。胸元のシャツを掴んで思わずにやける。トントンと、階段を上る音が聞こえた。ハッと我に返りエプロンを外そうとするも、焦ってほどこうとしたからかコブになってしまったよう。なんでこんな時に……と、さらに焦ってもう少しなのに上手く解けない。足音がピタリと止まり、コブが解けたと同時に容赦なく部屋のドアが開いた。「……はは、らっしゃい……」「何してん?」「へへ、着てみたくて……」無言で上から下へと目線を移しながら彼はじりじりと近づいてくる。そしてあろう事かペロリとシャツをめくられた。「待って、やめ……っ」「ふーん」「わっ!」後ずさりすると布団に引っかかりそのまま尻もちを着いた。手を重ね、覆いかぶさり見下ろしてくる治に心臓がはねる。「誘惑しよる格好見せられて、のらん奴はおらんやろ」そう言って無防備な太腿に彼の手が伸びた。
黒尾
今日も今日で残業の彼。持て余した時間でゲームを進めていたが気が付けばもう二十三時を回っていた。「もう寝る時間じゃん」明日の着替えの準備をして寝ようとしたところ目に入ったまだアイロンのかかっていない彼のワイシャツ。明日も早そうだしアイロンをかけてあげようか、そう思い手に取った。……その前に、ちょっとした好奇心で彼のシャツに袖を通す。「ふふ、これぞ彼シャツ」憧れていた彼シャツ、恥ずかしいから絶対鉄朗の前ではしないと決めていたので今がチャンスだった。ジャージを脱いで鏡を見ると、本当に漫画で見るような姿に。これが身長差、というやつか。面白い。さ、アイロンかけるかと、リビングへ向かえば「ただいま……」「て、つろ、あれ?連絡……」「したけど……それより、何その格好」「ははっ……ごめん!」慌てて寝室へと引き返そうとするも、彼の手によって腕を掴まれそれは叶わなかった。「なーんでそんな可愛いことするかなぁ?」無防備な耳元で低く、囁くように言葉を紡ぐ。私がそれに弱いと知っていて、だ。「やるなら俺の目の前でしてよ」「……んっ」耳朶に甘く歯を立てられ彼の熱を持った手が腿に這い、小さく声が漏れた。
及川
一時的に帰国した彼氏である徹は、学生時代のチームメイトと飲みに行っている。何も徹の帰国を待ち望んでいたのは私だけではないのを知っているから、ゆっくりして来てと送り出した。ただ、触れられる距離にいるのにお留守番というのが寂しくないわけではない。そんな中ふと目に付いた、キャリーバッグからはみ出している青葉城西のジャージ。手を伸ばし、少しだけ拝借する。「徹の香りだ」私が着たことによって、少しでも匂いが移ったら気が付いてくれるだろうか。……洗濯したらリセットされるけども。そんなことを思いながらジャージを着たままソファーへと身体を預けた。* * *ガチャリ、ドアが開く音ではっと目を覚ます。「ただい……」「おかえり徹。ごめ、寝ちゃってた……」上半身を起こし、慌てて髪を整える。「……っもお!」「!?」目元をおさえ、突然の大きな声を出す彼に驚いた。ぼやぼやした頭で何事だと考えている間に、近付いてきた徹からソファーへと押し戻される。「ね、そんな可愛いことしてただじゃ済まないのわかってるよね」勝手に借りたジャージのチャックを下ろされ、ようやく気付いた。「こ、れは……」「残念、言い訳しても遅いよ」ジャージを剥かれ露わになったその首筋に唇を落とした。
国見
久しぶりに高校時代の部活の人との飲み会だと言って柄にもなく浮かれていたから、ゆっくりしてきなと送り出した。もう日付が変わる時間帯だけどまだ英は帰ってこないし、そろそろ先に寝てようかな。ベッドに入ろうと寝室へ行くと、放置されたままの彼の部屋着。……少しくらいいいよね。まだ帰ってこないのをいい事に、上だけ彼の部屋着に着替える。上までチャックを閉めると、顔の半分が隠れ彼の香りに包まれる。「ふふっ、英の香りがする」安心する匂い、そのままゴロリとベッドに横になった。「……何してるの?」「!?」いつの間にか彼がドアのところに立っている。帰ってくる音に全く気づかなかった。「もう寝てるかと思ってたけど……」「あ、はは……今、今脱ぎますんで!!」「いい」「え?」「そのままでいい」ジャケットを脱ぎ捨て、シャツのボタンを外しながらこちらに歩いてくる英。お酒のせいかほんのりと赤く染まった頬が可愛らしいのに、その反面獲物を捕らえたように目はギラギラとしている。「あき……」「黙って」あっという間に距離を詰めた彼に組み敷かれ、深く唇を落とされる。「……そんな可愛いことしないでくれる」珍しく余裕のない彼に心臓が駆け足で動いた。