影山
お風呂から上がり、着替えを寝室へと取りに行く。もう少しで0時を回りそう。今日はバレー仲間との飲み会らしく、いつになくそわそわしながら出て行った。明日も練習だから遅くはならないと言っていたけれど。そんなことを考えながら着替えを漁れば、脱ぎ散らかされた飛雄の部屋着。好奇心が勝り彼のシャツに袖を通せば肘まですっぽりと隠れる大きさ。「お、おっきい……」華奢のきの字もないけれど、なんだかそう見えていい気分だ。「ただいま」ガチャリと玄関のドアが開いたと同時に聞こえる飛雄の声。脱ごうにも自分の着替えを出すのを忘れていた。「おい、寝室にいるの……か」「お、おかえり」一瞬焦ったけど彼シャツなんて概念飛雄は知らないだろうし、間違って着てしまったで通そう。「これは」「それ、彼シャツってやつだろ」じりじりと詰められる彼との距離。後退ればもう後ろはベッドで尻餅をついた。「今日、侑さんと佐久早さんが話してた」彼が膝をつけば軋むベッドの音。「言葉で言われてもよくわかんなかったけど」さらりと私の髪を梳き、耳元へ寄せられる唇。「実際見るといいもんだな、抱きてぇ」そう囁くものだから恥ずかしくて思わず顔を手で覆った。
菅原
洗濯を畳んでいれば、仕事で着る彼のシャツが目に入る。……いいこと思いついてしまった。これを着て孝支を出迎えよう、所謂彼シャツというやつだ。ちらりと時計を見れば、もう少しで帰宅する時間。部屋着を脱いで彼のシャツに袖を通し、ふたつほどボタンを外して腕まくりをする。うん、完璧。どんな反応をしてくれるんだろうとわくわくしながら玄関で待機した。間もなく鍵を開ける音がして、孝支が玄関に入ってすぐ見える場所に立つ。「ただい……」「おかえり!」ドアが開き彼の言葉へ被せるように飛び出した。「……!?何その格好」「じゃーん、見て見て彼シャツ」くるりと彼の前で一回転してみせると、孝支は口をはくはくさせていた。あれ?もっと笑うか喜ぶかしてくれると思ったんだけど、と少し不安になる。「……孝支?」「んもー!なんでそんな可愛いことするかなぁ」「わっ」鞄を床に投げ捨て、私を抱っこすると胸元に顔をぐりぐりと擦り付ける彼。それが子供みたいでなんだか可愛くて、彼の頭を優しく撫でた。「……今すぐ風呂入って来るから。この格好のまま待ってて」「わ……かった」顔を上げた孝支の瞳に、思わず心臓が跳ねた。
二口
「あ、着替え忘れた」脱衣所で裸になり洗濯を回し始めてから着替えを持ってきていないことに気づいた。……まぁ堅治も帰って来てないしこのまま取りに行くか。脱衣所の丁度斜め前の寝室に着替えを取りに行くと、今日洗濯するはずだった彼の部屋着がそこに脱ぎ捨てられていた。「一歩遅かった……」着替えを忘れなければこのシャツも見つけられたのに、と悔やまれる。でも回してしまったのは仕方がないので明日洗おうと手に取った。……どうせ洗うしいいよね。彼の服を着れば、裾は膝上まで隠れるほどの大きさだ。意外とワンピースでいけるのではと、姿見の前に立って思わずぎょっとした。「け……堅治いつから……」「ただいま?なんか楽しそうなことしてんな」覗いた鏡にうつったのはドアに寄りかかる堅治の姿だった。「なーに、彼シャツってやつ?」堅治は口角を上げながらすぐに距離を詰め、後ろは壁。……恥ずかしい消えたい。顔の横に手を付き、逃げ場を奪われる。「誘う練習でもしてた?」彼は至極楽しそうに私の頬へ添えた手を下へと滑らせ、シャツの上からふに、とそれを優しく揉んだ。「……っ」「ノーブラなの?……えっち」「ち、ちが……」「弁解しても遅いでーす。まずは一緒にお風呂行こうか」そうにっこりと笑う彼に抗える筈もない。
白布
珍しく洗濯物の籠に入っている賢二郎の白衣。いつもは研修先で洗っているのか、家にあるのは珍しい。スクラブは見たことあるけど研修医でも白衣着るんだ、なんてまじまじと見つめる。……少しくらい、いいよねと彼の白衣に袖を通せば想像より大きいそれ。彼シャツが嬉しくて椅子に座り、余った袖で自分の頬を挟んだ。柔軟剤に混じって彼の香りが残る白衣につい頬が緩む。それを見計らったようにリビングのドアが開いた。「ただいま、って何してるの」「お、おかえり賢二郎……」上から下まで動くその視線が痛くて、思わず足を揃えて座る。「はぁー」とこめかみに手を当て、大きなため息をつく賢二郎。そんなにダメだったのかと少し落ち込み謝れば「そういう無自覚なところ、どうにかならないの?」なんて彼がテーブルへ手をつき、同時に近づく顔に思わずどきりとした。「……ねぇ、俺が何とも思わないとでも思ってる?」そう言ってするりと腿へ伸びる彼の手に、じわりと顔が熱くなる。「白衣を見る度思い出したらどうしてくれんの」「けん……っ」名前を呼び切る前に噛みつくように塞がれた唇。舌を絡め離してくれない苦しさに彼の胸を叩いた。「……はっ、けんじろ」「……帰ってきて早々、お前が煽ったのが悪い」そう言って首筋へと唇を落とした。