恋に憧れた

昔から少女漫画みたいな恋に憧れた。
ただ良くも悪くも平凡の域を超えない私には、そんな甘ったるいものは現実にはなかなか起きなくて憧ればかりが募っていく。
恋がしたい、ベターな展開だっていい。少女漫画を読んだときみたいに、甘くてちょっと切なくて胸がきゅんとなるような恋が。
……そんな非現実的なことを言っているうちに、気が付けばまともに片想いというものもないまま高校生になってしまった。
しかも一番の青春ともいえる高校生活も最後である高校三年生を、今日迎えた。

「恋が……したい」
『また言ってる』
「またって言わないで、いまだ二次元とか配信者にしか惚れたことないってやばいと思う」
『それはそう。イケメンに慣れすぎて理想が高くなったんじゃない?』
「……否めない。でもなにより、男子と話すのが苦手っていうのはあるかも。ゲームでシミュレーションはバッチリなんだけど」
『オタクがよく言うやつ』
「なんか苦手なんだよね……びびっちゃう」
『少女漫画みたいな恋に憧れるーなんて言ってるけど、そろそろ少女も終わるよ私たち』

ごもっともです。と、その言葉が胸に突き刺さる。
小学生くらいまでは平気だった男子も、中学生になって環境が変わるとぐっと苦手になった。ちょうど思春期、同級生も急に増えたことにより人見知りも出てきて。さらに男子のことを同じ子供ではなく異性として意識し始めたのが大きいのかもしれない。
それから何がきっかけかははっきり覚えてないけれど、俗にいう乙女ゲーに出会ってしまい隠れオタクに身を転じている。

『あれじゃない、やっぱ二次元から離れるとか』
「……そういうけど、二次元に浸っても彼氏できてたじゃん」

やはり友達のいう通り二次元のイケメンを見すぎて目が肥えてしまたのだろうか。
そんな思いを抱えながら今日からこの三年五組で始まる最後の高校生活、なにか起きないかななんて淡い期待を抱いた。



かっこいいと思う人は今までに沢山いたけれど、恋愛感情までは至らなかった。
男子と必要以上に話すことができないし、いわゆる陽キャの人は苦手。身長が大きいというだけで低身長の私には威圧されてるような気がして近付けない。自意識過剰だとは重々承知なのだけれど。
だから好みの人は遠くから眺めて目の保養にさせてもらってたけど、接触がない分恋に発展することはなかった。

昨日は結局一日何事もなく過ぎて。そして新しいクラスになって二日目の今日、また淡い期待をして学校へ向かってるというわけだ。

『そういえばうちのクラスめっちゃ身長高い人いたね』
「今まで同じクラスになったことない人だったな……昨日自己紹介あったけど名前忘れちゃった」

音駒はクラスの数も多いから三年間で同じクラスにならない人もざらにいる。そんな中、ジャンプしたら天井に触れるんじゃないかってくらいの身長の人が初めて同じクラスになった。……きっと私が並んだら親子ほどの身長差ではないだろうか。



今日は身体測定、1cmでもいいから身長伸びてるといいな。





「‥っと、すみませんっ」

「ちょ、##name_1##なにやってんの‥」

「‥大丈夫」





よそ見してたら金髪にてっぺんが黒髪の子とぶつかってしまった。慌てて謝ると、全く気にもしていないというように手元へ目線を戻して一言呟きさっさと行ってしまった。
なんだろ、あの髪わざとああいう風に染めたのかな。それとも放置してるプリン?可愛い顔してたし、ヴィジュアル系の女形みたい。

でもそれより手に持ってるゲームの方が気になった。ほんの少しだけど、聞きなれた音が耳に入った。多分、私も何百時間とプレイしている狩りゲー。
やってる人いたんだ、同じ学校ならぜひフレンドになってほしい‥。





「ねぇ##name_3##、今の子と友達になりたい」

「どんな風の吹き回し?」

「モンハンやってた、フレンドなりたい語りたい」

「なるほどね‥」

「登校しながらやってるって、相当やりこんでるよ」

「今がチャンスだったのにね」

「‥残念」





そうだよね、ああいうチャンス逃してなかったらとっくの昔に彼氏できてるよね‥。
後悔先に立たずとはよく言ったもので。逃した魚は大きかったな、なんて思いながらまだ慣れない教室へと足を進めた。