微睡に身を委ねる*

……起きて待っててって言われたのに、いつの間にか寝てしまっていたようだ。起きなきゃいけないのに中途半端に寝たせいで、微睡みからすぐに抜け出すことができない。その上なんだか息苦しい。私何か口に入れたまま寝たっけ?……でもそんなことしたら恭弥から絶対怒られるし、しない。
え……待って、そしたらこの息苦しさは何?
夢現のままそっと重い瞼を持ち上げると「ようやく起きたね」と、ゼロ距離に整った恭弥の顔があって。思いがけないことに心臓が大きく跳ねた。

「えっ?きょうや、な…っ」
「待っていてって言ったのに、寝ていたのはどういうこと?」
「へ…んぅっ」

反論するよりも先に塞がれた唇。まだ覚醒しきっていない私の咥内へ彼が侵入するのは容易いもので、ぬるりと舌を絡めとられた。歯列をなぞる彼にじんと腰が疼いて、寝巻を掴む手に力が入る。逃げようとしても後頭部を彼の大きな手のひらで押さえられ、その術も見つからない。なんとか酸素を取り込むために身を捩るが、それすら許さないとでもいうように角度を変えて重ねられる。だらしなく開いた口端から漏れた、どちらとも言えない唾液を拭うことすら許されなかった。
ようやく解放され、肩で息をする。寝起きも相まって、頭がぼんやりとし何も考えられない。火照った身体は力が入らず、恭弥の寝巻きを掴んでいた手もずるりと落ち布団へと沈む。

「いつからそんな淫らな子になったの」
「だ…誰のせいだと思って……」
「自分のせいでしょ。そんな格好で寝落ちして、誰かに見られたら僕が許すと思う?」
「え…?」

布団の脇をちらりと見れば、きちんと畳まれたままの寝巻きがそこにあって。恐る恐る自分の身体へ視線を戻すと、服のチャックを殆ど下げ露になっている下着とショートパンツの部屋着が目に入り血の気が引いた。
……思い出した。着替え始めた瞬間、友達から連絡が入ったから返信して。そうしたら丁度アプリのAPが回復したという通知も入ったため、先に消費してしまえと布団に寝転んだ。……見事にその途中から記憶がない。寒くもないからこんな格好で寝落ちしても気がつかなかったんだ。寧ろ扇風機の風が心地良いくらいで。
寝る時は着替えるからと駄々を捏ねて洋服を許してもらってるのに、これは、まずい。

「お仕置きが必要かな」
「待っ…」
「待たない」

背中へと回る熱っぽい恭弥の手が、いとも簡単にホックを外す。締め付けることができなくなった私の胸へ乗っているだけのそれを彼は服と共に取り去り、明々とした部屋で胸の膨らみが露になる。決して小さくない私の胸は下着がないと重力に負け形を保てず、それを見られるのがとてつもなく嫌で。「おねがい、暗くして」とあまりの恥ずかしさに両手で隠すも、彼は片手で私の両手首を頭の上で押さえつけた。

「僕はいい眺めだと思うけど」
「やだ……見ないで」
「すぐに気にならなくなるよ」

首筋に顔を埋め、何度もリップ音を鳴らす彼。そして耳へとなぞるざらつく感覚に背筋がぞくりとした。恭弥の息遣いと直接耳に響く水音に、我慢できず声が漏れる。段々と支配されるその感覚に、やだと身を捩ってもやめてくれる気配はない。……そこが弱いと知って、だ。

手首を押さえていた恭弥の手が、するりと体を撫で胸の膨らみへと添えられる。やわやわと揉みながら、もう片方の先端を咥えた。彼の目を両手で隠したくて動かしたが、何故か自由にすることが叶わなくて。確かに彼の手はフリーなのに、私の手首は固定されたままだ。
焦る私を知ってか知らずか、恭弥はツンと主張する突起を弄ぶように舌で転がす。

「ん…っや、あっ…んぁ…きょ、や…手ぇ…」
「ん?あぁ、ちょっとばかり細工をしたよ。僕の目を隠そうとするからね」
「なん…ひゃ、あぁっ…」

先端を甘噛みされ、高い嬌声が漏れた。私が気持ちいいと思う痛さを彼は知っていて、刺激されるたびに腰がじんと疼く。肘を曲げ口元を隠すように固定されたままの両手を持って来ると、目に入ったのは見たことのない手錠のようなものだった。

「やぁ、はずし、て……っん」
「やだ」

彼の目の前に手首を出して懇願するも、あっさりと一蹴りされてしまった。「もう少ししたら外してあげるよ」と耳元で囁くと共に先端を指先でキュっと摘まめば、嫌でも漏れる声。
寝起きから全て彼のペースに乗せられて、少し困らせてやりたいと固定された手首を彼の首へと回し引き寄せた。

「驚いたよ、そういう使い方もあるんだ。……で、ここからどうするのかな」
「う……」
「ふっ、君のことだから何も考えていないだろうね」

絶対驚いてないのにそう言って笑う彼。私の考えていることが全て見透かされているようで悔しい。こんな状態でこの先のことなんて考えられるわけがないじゃないか。

「でもこのままだと僕も自由に動けないしね。外してあげるよ」

彼の首の後ろへ回されている手錠に手をかければ簡単に外れた。……手が自由になったからと言って何かが変わるわけではないけれど。
恭弥は拘束から解かれた私の手首を掴み、手の平へと唇を寄せた。私を真っ直ぐ見つめたままぺろりと舐めるそれにぞくりとする。『今から食べますよ』と予告されているような、そんな感覚だ。

「きょ……や」
「期待に応えてあげるよ」
「っ!ちが……っ」

私へ見せつけるように中指と薬指に自分の唾液を絡ませる恭弥。これから何をされるのか、その先を想像して下腹部がきゅんとする。ショーツの中へするりと侵入し秘裂をなぞる彼の手に、口元を押さえた。

「わかる?触ってないのにもうこんなに濡れてるよ」
「ん……っ、言わな……んぁっ」
「声我慢しないで」
「あ、やぁ……やだぁ……」

しっとりと濡れる秘部を慣らすように指を往復させる。それなのに一番敏感なところには触れてくれなくて余計に腰が疼いた。秘口で指が止まったかと思えばつぷりと異物が入ってくる感覚。容易く飲み込んだその指を抜いたり挿れたりして、ナカをほぐし受け入れる準備を始めた。
それでも声を抑えようとする私に不満を持ったのか、彼の舌が唇を割って深く口付ける。舌を絡め、吸って、甘噛みし、息苦しいのに、咥内を侵される度にもっと……もっと欲しいと求めたくなるのは彼の計算の内だろう。

「んっ、ん……ふっ……んぁっ」
「ん、はぁっ。……邪魔だねこれ」
「ひゃ……っ」

愛液に塗れた指を引き抜けば、取り去られる部屋着とショーツ。そして舌なめずりをする彼と視線が交わり、反射的に目元を手の甲で隠した。
「ちゃんと押さえて、僕を見て」なんて、私の手を取り自分で自分の足を持ち上げるように腿の後ろへ誘導された。彼へ秘部を自ら曝す格好な上に、もう顔を隠すこともできない。恥ずかしさでどうにかなりそうだ。

「そう、いい子だ」

丁寧に胸から下へと唇を滑らせる。秘部へと顔を寄せる彼は私と目を合わせたまま、指でそこを優しく広げ舌を這わせた。たったそれだけなのに、薄く開いた唇から漏れる自分のものとは思えない嬌声に吐息。秘口から突起の手前まで往復するそれに、わざと音を立てて愛液を吸う、その度に背中へぞくりとした感覚が走る。……だけど一番触れてほしいところには触れてくれなくて。

「んん……っ、あっ、あぁ、んぁっ」
「自分から腰を揺らして、身体は素直だね」
「……っ!」

意図せず腰が揺れていたようで、穴があったら入りたいくらいだ。顔を逸らしたその瞬間、そこへの刺激で思わず足が震える。

「あぁっ……まっ……や、あっ、あぁっ」

甘く痺れる感覚に足を押さえることも出来ず、シーツを強く握りしめた。秘口から愛芽へと這う舌に自分の意志とは関係なく腰が浮き上がり、指先に力が入る。それに加え秘口で愛液を纏わせ簡単に飲み込む彼の指も合わさって。外と内からの刺激に呼吸が浅くなり、押し寄せる快感に明るい部屋なんか気にもできないくらい思考が奪われた。

「きょ、や、あっ、だめ……あぁっ、や、らっ」
「いいよ」
「……っも、だっ、あ……あぁ……っ!」

ぷっくりと膨らんだ愛芽を剥きヂュッと吸ったと同時に、膣内を掻き回していた指はその一点を刺激して。頭からつま先まで甘い痺れが走った。薄く膜が張り滲む視界の向こうでは、満足そうに恭弥の唇が薄く孤を描く。酸素を取り込むために肩で息をし、先ほどまで力が入っていた手をだらりと布団へと投げ出した。

「まだだよ」
「えっ、ちょ、や、だめ……っ!あぁ、やっも、ごめんなさ……っ」

これで終わりかと思いきや、痙攣する足を掴み尚も愛芽へを舌を這わす恭弥に"お仕置き"の言葉を思い出した。体を捩りこの状態から逃げようにもうまく力が入らない。彼の肩を押してもびくともしなくて。達したばかりで更に感度が増したそこを刺激し続けるものだから、頭がおかしくなりそうだ。

「やぁ、へんに…な、きょ……や、ゆるし……っ!はぁ、は……っ」
「……ここで気絶されても困るからね」

解放されたと同時に脱力し、全身を布団へと預ける。
恭弥は口に咥えたゴムをぴりっと破き、それをもう片方の手で下着を脱ぎ反り勃つ自身に被せた。「邪魔だね」なんて、着ていた寝間着を取り払うと彼の引き締まった身体が曝される。自分とは正反対のその身体。明るいところで見るとさらに刺激が強すぎて、見てはいけないものを見てしまった気持ちになる。
恭弥は私の膝の裏に手を添え、先端を秘口へと当てて。挿れずにそこでぬちぬちと動かし厭らしく響くその水音は、その先を容易く想像させた。

「その物欲しそうな目、堪らないね」
「……あぁっ、ん、ふっ……んっ」
「っ、そう、力を抜いて」

床に手をつきその腕で私の膝裏を固定すると、ナカを押し広げゆっくりと入ってくる彼のモノ。彼と身体を重ねるのは何回目だろう。初めてでもないのにどうしてもこの瞬間は緊張からか体が強張って。投げ出していた腕を彼の首へと回した。それに引き寄せられるように彼は私の首筋へと顔を埋め舌を這わす。
下腹部へ集中していた意識が弱点である首筋にも分散し、腰が疼いた。その圧迫感から浅い呼吸と、息を止めることを繰り返していたが、彼が首筋を舐めたり吸ったりすることで声が漏れ適度に力が抜けたよう。

「ひゃっ、や、あん……っ、んぅっ」
「……挿入ったよ」
「ん…ふっ、んん……っ」

彼を全て受け入れると、だらしなく開いた私の唇を啄んだ。
緩やかにピストンを始めると、愛液が溢れていたそこはすぐに馴染んで快感に変わる。恭弥が動く度にあられもない耳障りな声が響く。ゆっくりと挿れて抜いてを繰り返すと、奥から膣口まで擦れるのがはっきりとわかって。湧き上がるような快感がじわりと脳を侵す。

「ちゃんと見て」
「ン、んぁっ、やぁ……っ」

そっと目を開けば頬が紅潮して額には薄っすらと汗が滲む彼。「見たね」と唇が孤を描けば彼は身体を起こし、私の腰を少し持ち上げるように支えた。恭弥が舌なめずりをした次の瞬間、一番奥を突かれそのままぐりぐりと押し付けられて。最奥で擦れるその快感に、意図せず自分の腰も揺れる。

「あっ、あぁ、や、そこ……っ、ン、だ、めっ」
「……まだだめだよ」
「え、あっ、んっ、あぁ……ンっ」

じわじわと迫りくる感覚に脳がぼうっとしてきたその時。律動をやめ、繋がったまま私の足を片側へと揃えた。なんで?なにをするの?という疑問しか湧かず、ただただ彼を見つめると身体ごと横を向かされる。そして恭弥も横になり後ろから抱き締められるように肌を重ねた次の瞬間、止まっていた律動を再開する。

「―――っ!あっ、あぁっ、や、ら……め……っ」
「……っ、は、いいね」

そう言った恭弥がどんな顔をしているのかわからない。パチュパチュとぶつかり合う肌の音に、奥まで届く彼のモノ。動きに合わせて漏れる声と先ほどとは違う快感に腕枕をしている彼の手を強く握りしめた。

「ン、あっ、あっ、んぁ……っ」
「……どうかしたのかい?」
「あっ、あぁ……っ、きょ、やぁ……」

恭弥の温もりと耳元で感じる彼の息遣いに身体が敏感になる。彼がフリーになった片手で乳房へと手を添えやわやわと揉みしだいたかと思えば、つんと固くなった先端を摘ままれて。両方から襲い来る刺激に逆らうことはできなかった。

「んぁっ、や、そ、れ……っ、ひゃ、ぁ、ンっ」

今まで乳房をいじっていた手はするりと身体をなぞり、下へと移動した。そして愛液でぬるぬるになった陰核を彼が指先で転がせば、下腹部に言いようのない快感が押し寄せた。

「だ、め……っ、へん、に、あっ、あ……っ」
「だめ?こんなにナカもうねっているのに」

これはだめ、いやいやと首を横に振ってもやめてくれない。自分が今どう声をあげてるかもわからず、快感に脳が支配される。また呼吸が浅くなり、必死に酸素を取り込もうとしてもそれが難しい。

「ち、が……ンっ、あ、らめ、あ、あぁ……!……っ、はぁ……は……」

「いい?」というその言葉の直後、キュっと愛芽を摘ままれ全身に電気が走るような感覚に目の前がチカチカする。一気に脱力し、肩で大きく息をした。

「っ、締め付けすぎ、だよ」

堪えているような恭弥の声色に終わりが近いことを察する。でもこのままの体勢では恭弥の顔が見えない。……それは、嫌。
恭弥の手の平に自分の頬を擦り「……きょうやと向き合ってがいい」と呟けば、一瞬うなじに唇が触れ身体を起こす彼。さっきとは逆に、足を広げられ彼と向き合う形に戻った。

「君は本当に……無自覚で、質が悪い」
「なに……がっ、あ、ンッ、んん……っ」

指を絡め、覆い被さるような体勢で触れる熱い肌が心地好い。段々と速くなるピストンに合わせて漏れる嬌声。色事特有の肌のぶつかる音に、私だけでなく彼の浅い吐息も耳に響く。

「も……っ、……はっ」
「ンッ、はぁ、あぁ……っ」

ぐっと奥へと突き上げられたと同時に私のナカでどくどくと脈打つのがわかる。全身が蕩けるような感覚にぼんやりとすれば、紅潮した頬で目を細める彼と目が合った。
ついばむように唇を重ね、ゆっくりと引き抜かれる彼のモノに名残惜しさを感じる。ゴムを結んで捨てた彼は、私の隣へ横になり腕枕をしてくれて。布団をかけ、熱を孕んだままの身体をぴったりと寄せ足を絡めた。

「……恭弥、ごめんね寝てて」
「寝るにしてもあんな格好で寝ないことだね」
「草壁くんに見られるかもしれないから?」
「そうなったら彼を咬み殺すよ」
「あはは、めっちゃ理不……尽」

適度な疲労感に彼の体温と香りのせいか、ゆっくりと落ちてくる瞼に抗えない。もう少し帰ってきた恭弥と話していたかったのに、気持ちとは裏腹に意識が遠のく。

「恭弥、すきぃ……」
「知ってるよ」

恭弥の首元に擦り寄ればおでこに触れる柔らかな感覚。優しい声色で私の名前をなぞるように呼び、彼の「おやすみ」の一言で緩やかに夢の中へと誘われた。