一歩を踏み出す勇気

「‥」


「‥」





さっきの事からか、いつも以上に口数が少ない。下を向くと、研磨が巻いてくれたテーピングが視界に入る。その時の事を思い出すと、なんだか顔がまた熱くなる。





「あ、」





他の事を考えながら歩いていたら、無意識のうちに二人でいつもの公園に足を向けていた。気が付けば目の前にある見慣れた噴水。暗くなってきたので、ライトアップされている。(ライトアップなんてお洒落な言葉使ってるけど、実際には単色のLDEで照らされてるだけ)







「‥つい癖で来ちゃったね」


「今日は研磨の大好きなアップルパイ買ってないのにね」







研磨と顔を見合わせて笑った。学校を出てから初めて会話をして、顔を見た。ここまで来てしまったので、近くのベンチで少し休憩をしてから帰ることにした。研磨はちょっと待ってて、なんて言ってどこかへ行ってしまった。

目の前の噴水はほんとに些細なものであるけれど、よく見るとLEDに照らされた水しぶきがきらきらとしていてとてもきれいだ。






「‥わっ!」


「やっぱり驚いた。ココアでよかった?」


「びっくりするよ‥!あ、ありがと」






ぼーっと噴水を眺めていたら、後ろからほっぺに温かいココアを当てられた。驚いている私を見て研磨はふっと笑う。まさか、研磨がそんなことするなんて思ってもみなくて心臓がはねた。

缶を開けて一口含むと、ココアの甘さがふわりと口全体に広がった。







「‥##name_1##がバレーやってたなんて驚いた」


「ふふっ、そう見えないでしょ?今美術部だし」


「スポーツはやったことありそうだと思ってたけどバレーだとは思わなかった」


「でもまぁ、小学生の時だったしね」


「ポジションはどこだったの?」


「実は‥恥ずかしながらセッターを少々‥」


「おれと、おなじだ‥なんか嬉しい」






そう言って研磨は笑った。研磨は自分の事すごくないなんていうけど、自分が経験したことがあってどんなに大変かわかってるから音駒であれだけのプレーをしている研磨は本当にすごいと思う。一番かっこいいと思うんだ。‥いや、きっと彼がセッターでなくとも一番かっこいいと思っていただろう。多分私は研磨の事が好き、だから。


さっきは言えなかったけれど、なんだか今なら言えるかもしれない。研磨に、かっこよかったよって。言わないと、それより先に進まない気がして。






「研磨、あのね」


「ん?」


「さっきね、練習見たとき言いそびれた事があって、」


「‥なにを?」






緊張からか、なかなか言葉がのどにつっかえて出てこない。でも言いたい、研磨に伝えたい。






「あのね練習見てたけど、研磨が一番、かっこよかった‥です」


「え‥あ、ありがと‥。俺も、言いたいことが」


「え、なに?」


「‥‥実は、おれ##name_1##のこと、」











(思い切って伝えてよかった、)