ううーん、あつい。
エアコンをつけるほどではない、けれどなんだか寝苦しくて目が覚めてしまった。時計は深夜一時半を回ったところで、殆どの人は寝静まっている頃だろう。
布団を蹴飛ばしたり、ゴロゴロしてみたが、一度目を覚ましてしまったからか全然寝付くことができなかった。
「……水、飲も」
少し涼めば寝れるかも。と、むくりと起き上がり誰も起こさないように部屋のドアを静かに開け、足音を潜めてキッチンへと向かった。
「うわ気持ちいいー」
冷蔵庫を開けるとひんやりした冷気が肌に触れて。そのまま冷えた水を手に取り、勢いよく流し込んだ。火照った体に染みわたり、熱がすっと引いていく気がした。
……けれど、勢いよく飲み込んだせいか逆に目が冴えてきたかも。このまま戻ったところでなんとなくモヤモヤした部屋では寝れそうにない。明日は休みだからよかったけれど。たまにあるんだよなあ、こんな日。
「――えっ」
不意に玄関からカタンと聞こえた気がした。
まさか、ポルターガイストとかじゃないよね。なんて時計に視線を移したが、まだギリギリ丑三つ時ではない。
足を忍ばせ、恐る恐る玄関を覗けば頼りないほどの明かりがついていた。音の正体を掴むべく近づくと、あく太くんの靴が玄関に転がっている。もう一つの靴も宙ぶらりんでなんとかバランスを保っている状態だった。
「……あーもー、びっくりしたぁ」
不意に玄関の方へと足をのばせば、みんなの靴がそれぞれの定位置に並んでいる。……けれど、添くんの靴だけが、そこにはなかった。
他のメンバーは全員帰宅して寝静まっているのに、彼だけがまだ、帰っていない。
不在を証明するそのぽっかりと空いた空間を見つめているうちに、胸の奥が少しだけざわつく。
……なんかこれじゃ、ストーカーみたいだな。
誰もいない玄関をじっと見つめ、彼の帰りを気にしている自分に気づく。
「んー、添くんだー」
「主任、風邪引きますよ」
「あはは布団だし大丈夫だよ」