鈍感にも程がある。
今日は会社に早く来すぎて、始業まで時間を持て余している。メールだけでもチェックしておけば後で楽なのだろうが、今日はそんな気分でもない。
「おはようございます!」
爽やかな笑顔で扉を開けて入ってきた彼女は俺の営業事務をしてくれている。どうやら今日はすっきり起きれたらしい。
「おはようございます黒尾さん」
「おはよ」
彼女が俺より遅いのは珍しかった。たまに俺が早く出社したとしても、すでにデスクに座りスマホをいじっているから。……なんだか少し気になった。
「今日珍しく遅いね」
「あー昨日研磨と飲みに行ってて」
「ふたりで?」
「だって黒尾さん残業だったじゃないですか」
「まあそうだけど」
彼女はそれがどうしたんだというような視線をこちらに向ける。なんか……小さいことなのに俺ばっかモヤモヤして不公平だ。
「あ、そう言えばこの前俺も総務の子とふたりで飲みに行ったよ」
「へぇ、よかったですね」
「あと同級生の子とも行ったなぁ」
「……節操ない人は嫌われますよ」
適当な嘘を混ぜて話したら、蔑むような目を向ける。何で、何でだよ!
「……妬けよバカ!」
「え、妬いて欲しかったんですか?」
「うるせー、この鈍感」
「黒尾さん意外と可愛いところもあるんですね」