心配する気持ち


シブヤ・フェスタが終わり、次の登校日。緋透は普段と変わらない様子で登校する。先日の疲れなのか日付が変わるまでゲームをしたせいなのかまだ眠い。ふぁと今日何度目かわからないあくびを繰り返す。午前の授業サボればよかったと後悔するが、もうすでに校門近くだ。
今更もう遅いと仕方なく足を進めると唐突に肩をポンと叩かれた。そこまで驚く事はなかった、後ろを振り向くとそこには少し眠そうな顔をする類が軽く手を振りながら挨拶をしてくれた。
「おはよう、緋透くん」
「はよ、類…ふぁ……」
これで何回目か忘れたあくび「眠たそうだね」と言われ無言で頷く。授業中に寝そうだなと思いつつ学校へと足を進めようと脚を動かし歩き始めた。
普段通りに歩くが少しの違和感を覚える。ふと類の方を見ると歩きが少しだけぎこちないのがわかった。
緋透は内心しまった、と思いつつ彼の方を見ると目が合う。彼も何かに気付いたのかにこりと笑ってくれた。
(そんなに痛みは無さそうだけど…やっぱりまだ無理はさせられないよなぁ…)
シブヤフェスタの時に負傷した足首、そんな直ぐには治らない捻挫、まだ痛みは残ってるのだろう、緋透は類が負担にならないように歩く速度をゆっくりと遅くする。
そして類の半ば無理矢理に奪い取るように引ったくるときょとんと今何が起きたかわからないように目を丸くしていた。
「類は怪我人だから頼る事。まだ痛むんだろ?」
「正直まだね…けど荷物は返して、緋透くんに迷惑はかけたくないから…」
「迷惑なんて思ってねぇよ…迷惑だったら俺だったらはっきり言うだろ…」
「ほら、行くぞ」と声をかけて歩く速度を落として類の負担のないように歩きやすいように足を動かした。ぶっきらぼうな緋透の優しさに類はそっと「ありがとう」と小さく呟き学校へと向かった。

それからその日は緋透によって至れり尽くせりな一日だった。移動教室があれば類の教科書や筆記用具を持ったり、何か問題事を起こそうとする前に止めたり。昼休み購買に行こうとする類の代わりに緋透が自分のを買うついでに一緒に買ったりと類に尽くすように緋透は動いていた。
類はそれが少し申し訳なさそうに自分の事は自分でやると緋透には言ったが「俺がやりたいから勝手にやってるだけ」と突っぱねられた。
「流石にそこまでやってくれるのは正直僕も申し訳ないって思うよ」
昼休み、今日は中庭で昼食を取っていると申し訳なさそうに類はポツリと呟いた。それを聴いた緋透はきょとんとしながらも先ほど購買で買ったお昼のパンを口に頬張りながら咀嚼した。
その言葉は今日何度目だろうと思いつつ、こんなに言われるなら数えれば良かったなと思いつつパンを飲み込み、大きなため息をついた。
それを見た彼はなぜため息をついたのかわからなそうな顔をしていた。
「あのなぁ…俺は心配してんの、物凄く!それはもう自分が死んでしまうんではないかと言うぐらいな」
大袈裟のように呟く緋透の顔は本気で心配しているような素振りを見せるとポカンとしか顔を類はした。
そっと彼の肩に自分の頭を乗せて俯く。下を向いた瞬間おろしていた髪の毛で緋透の顔は見えにくくなる。
「ショーが大事なのはわかるよ、だけどさ…目の前で類が怪我して心配しないわけないじゃん」
「緋透くん……」
彼女が類をどれだけ心配してるのが伝わってくる。そこまで心配してるとは思ってもいなくて類は嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちで心がくすぐったかった。
ふと何かを思い出したかのようにガバリと顔を上げる。顔がくっつくきそうな距離、目が合う。目を逸らさせないような勢いで緋透は珍しく感情を出すように類に詰め寄った。
「類がショーバカなのは前々から知ってる!だけど自分の事より、怪我してでも優先するのは俺はそんなショーはやりたくない」
「うん、ごめん…ごめんね」
「本当にわかってんのかよ…次自分を蔑ろにしたら怒るからな」
珍しく感情任せに言った緋透は言い切った後少し照れ臭そうにそっぽを向き手元に残っていたパンを頬張るように口に入れた。
「…ありがとう、緋透くん。僕を心配してくれて」
類はどこか満足そうに笑っていた。

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