ある日の昼休み

 昼休み、殆ど人気がない校舎裏。誰が好き好んでこんな気味が悪い所でお昼を食べたいと思うのだろうと言う場所に倫理はお昼を食べに足を運んでいた。
 先程コンビニでお昼を買い、コンビニ袋を手に持ち鼻歌を歌いながら、少し一人分より多いぐらいの量を片手に持ち向かっていた。
「こんな所でお昼を取ろうと思うなんて僕ごとき以外いないよね」
 と、座れそうな場所を探していると人の気配を感じた。ありゃま、と顔をひきつる倫理。どうやらこんな場所で昼休みを過ごそうとする変わり者がいるとは。
 見覚えがある見た目。他とは違う浮き目立つ容姿。真っ白なアシンメトリーな髪型の学ランを着た顔見知りである毬子は、ピクリとも動かずに目を閉じていた。
「…まりちゃんまたお昼持ってないし」
 やれやれと呆れたように一歩近づく倫理。お昼を持ってない代わりに無造作になにかの参考資料が数冊置かれていた。
 一歩、また一歩近づいてみるがピクリとも動かない毬子。寝息すらも聞こえずに死んでいるかのような錯覚を覚える。
「寝てる、だけだよね?」
 流石の倫理も心配になる。ここは愛教、なにかあるかもしれない。しかも毬子はそんな愛教の中でも“ある意味異端”の存在だ、気を抜いたらなにをされるかわからないのに毬子は寝ていた。
 また一歩近づく、目の前に立っても毬子の反応はなかった。
「……」
 すっ、と毬子の前にしゃがむ倫理。自分でもなにをしているんだろうと考えがよぎったが今はそんな事は気にしない事にした。
 そっと近づき自分の耳を毬子の左の胸に当てた。
 とくん、とくん。早くもなく、遅くもない心臓の音が聞こえる。生きてる、当たり前な事だがほっと一安心する倫理。よかった。まだ生きていたと安心した。
 起こさないようにすっと静かに離れる。寝息も聞こえず静かに眠っていた。驚かさないでよとふうとため息をついた。
 ポッケからなぜか入っていたクラッカーを取り出し毬子の方に向けて放った。
「おはよ!まりちゃん!こんな所で寝れるなんてびっくりだよ、まさか死んだと思っちゃったし死体の第一発見者なんて僕はいやだからね!」
「うわぁっ!?」
 ぱあぁんと勢いよくクラッカーが鳴る。流石の毬子もその音には気づいて驚くように目がさめる。一瞬なにが起きたか理解するのに数十秒かかり目の前にいる笑っている倫理を見てやっと理解をした。
「び、びっくりした…」
「あははっ! 最高の目覚めでしょ」
「そうね、最低の目覚めだったわ」
 寝起きのテンションのため強く当たるのもめんどくさい毬子。何事もなかったかのように大きく背伸びをした。関節がバキバキと鳴った。
 周囲に散らばった参考資料が目に入る。片っ端から拾い集め空いたスペースに倫理は座った。
「また勉強?そんなに頭良くなって楽しい?」
「さあ?どうだろうね…楽しいってよりかは武器を増やしてる感じかしらね」
「ふぅん」
 あまり興味がないように倫理は相槌をしながらビニール袋の中から買った物を取り出し毬子に一つ何も言わずに渡す。
 いらないと目で訴えるが張り付いた笑顔に圧をかけて「いらないのに」と諦めて受け取る。
「まりちゃんは食べなさすぎ」
「…食べるの疲れるのよ、本当に不便な体」
 大きくため息をし貰った物をゆっくりと口に運ぶ。それを確認した倫理も昼食を取り始めた。


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