書きたいシーンだけの中途半端だったり、昔に書いたものをリサイクルしてたり。
April 28th

Squalo and Colette


「貴方って、意外と可愛らしいわよね」
 ベッドに腰掛けたままの琴が、まるで同意を求めるかのように言った。ズボンだけを履いたスクアーロは、濡れた髪をバスタオルで拭いながら、勢いよくこちらに振り返った。
「ああ? てめぇなに言ってやがる!」
 ひとつの束になった長い銀髪が振り回されると、「周りの物を壊しそうだわ」と琴からお小言を食った。スクアーロはいつも以上の声量と、鋭い三白眼をこれでもかと吊り上げてにらみつけてくる。その表情には、怒りよりも琴の真意を探るような、いぶかしげなものがにじんでいる。しかし、その髪の色のように薄い色素の肌はなんだか赤い。
「あら、なに? 照れているの?」
 貴方って初心だったのね、なんて琴はからかうように肩を揺らした。くすくすと口元に手をやる姿を見て、琴は自分をからかっているのだと気づくと、スクアーロの赤らんだ顔はだんだんと白んでいった。
 こいつは……と、わざとらしくため息をついて、おおざっぱに頭を掻く。憎々しげに舌打ちをする様子に、琴はますますおかしそうにする。
「オレのどこが可愛らしいって? 説明してみやがれ」
「うふふ。そうね、言うのならキスの仕方かしら」
「はぁ?」
 眉根をこれでもかと寄せて、スクアーロは抗議の声をあげた。
「だってね、スクアーロ。貴方のキスってくちびるを触れ合わせるだけなんですもの! まるで小鳥がついばんでいるみたいなんだわ。それが、いつもの貴方の傲慢な態度とあまりにも違っていて……」
 笑いがこらえきれないようで、琴は顔を手で覆った。スクアーロはそんな様子を、まるで不可思議なものを見るようにして見つめた。――琴の指摘したことは、自分のなかで一切かすりもしない点だった。
「いや、普通に、舌も入れてんだろぉ……」
「確かにそうなんだけれど。でも、私がくちびるをノックするみたいに舌でつつかないと、貴方はそこを開いてくれないのよ。……気づいていないのかしら?」
 まったく覚えがないと、スクアーロは答えた。まずキスに夢中になっていれば、自分の行動など覚えているはずがない。お互いの目を見つめ合いながら、ひしと抱き合ってくちびるを合わせる行為に耽っていると思っていたのに、彼女にはそんなことを観察する余裕があったらしいことを初めて知った。
「ずいぶんと余裕をかましてくれてたじゃねぇか」
「やだ、怒らないでよ」
 琴のしとやかな手が、なだめるようにスクアーロの素肌の胸に静かにそえられる。無意識に近づいていたスクアーロの体は、琴から落ち着いた距離に戻った。
「それにね」
 琴が口を薄く開くのを認めたスクアーロは、まだあるのかと困惑した。さっきから琴のあげる言葉は、なんだか自分の想像していた己の男らしさはすべて思い込みだったのだと思い知らされるようで、正直耳をふさぎたくなるものだ。プライドを傷つけられるのとは、また違った気持ちになる。
「リップ音が軽くて小気味いいの。それがさらに小鳥を連想させてね。ついばむだけじゃなくって、枝の上で跳ねている感じもするのよね」
「お嬢様はえらくメルヘンな思考をするようになったなぁ」
「……あら、でも、どちらかというとそちらのほうが近いかしら?」
 スクアーロの嫌味は馬耳東風、右から左へと抜けている。思わぬことに気づいた琴は、そのまま口を開いたままの態勢で固まった。「待て待て。もう、いい」自分の考えに浸ろうとする琴の顔の前で手を振って、こちらに意識を呼び戻す。
「おら、体冷やす前に着とけ」
「まあ、ありがとう」
 いつの間に持ってきたのだろう、スクアーロは琴の着ていたワンピースを膝の上に投げる。頭部が抜けるところを探して、頭からすとんとワンピースを被るようにして着る。それによって少し乱れた髪を手櫛で軽く整える。琴のその表情は、目は、どこか遠くを見ている心地だった。
moji:1551
April 28th スクコト/RE!
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