1. 誰かに誕生日を祝われることもなければ、誰かの誕生日を祝ったこともなかった。 私はそうした、孤独の中に生き、孤独の中で葬られゆく人間であると諦観していた。そうせざるを得ない人生だった。 ……おまえに出逢うまでは。 「誕生日だと言ったな。実は、今日のためにささやかなセレナーデを書いた。聴いてくれるか?」 蝋燭の灯が反射する鍵盤に、指を置く。私の心の穴に温かな愛を注いでくれた彼女を思い浮かべて、息を吸った。 これから奏でるのは、音楽という名の愛だ。 (20201220) Afterword随時更新予定。 |