向き合う勇気
「なまえさん!会いたかったっス!」
大型犬のように駆け寄ってくる後輩に自然と笑みが零れた。
あの日以来、何かと理由をつけて会うことを避けていた。あんなに真剣な想いをぶつけられて、どうすればいいかわからなかったからだ。
「メシ行きましょ!」
右手を赤也の左手が包む。あ、意外と手大きいんだと男を意識する。何年もの間、先輩と後輩の関係で私にはブンちゃんもいたから、赤也の事、そういう風に見た事なかったけど。
「なまえさん、平日でも夜中でもいつでも呼んで。バイトしてるけど終わったらすぐ行くし。って俺が会いたいだけなんスけど…」
赤也が視線を逸らす。照れているのが見て取れて、何とも言えない気持ちになった。
「ありがとう。本当にいつでも連絡していいの?」
「当たり前じゃないスか!だって、俺が彼氏でなまえさんは彼女だろ?」
笑いながら、苦しそうな表情をしている赤也に私の胸も苦しくなった。私が、赤也にこんな顔をさせているんだと思うと、どうしていいかわからなかった。
赤也が全力で好意を向けてくる度に、同じだけの気持ちで返せていない事、仁王の事で胸が苦しくなる。苦しくなるだなんて、自分のせいでしかないんだけれど。
「ねぇ、赤也。」
「何スか?」
「ご飯食べ終わったら、ウチ来る?」
「…えっ、いいんスか?!」
目を見開いて少し声を上げる赤也に自然と笑みか溢れる。
「彼氏彼女なんでしょ?」
「まじスか!っしゃ!!」
強調して言うと、見るからに嬉しそうな顔をした。
キラキラとした目で、全力でガッツポーズをする赤也に真剣に向き合おうと心の中で誓った。