ドアが数回
叩敲された。依頼人の名取さんが来た様だ。
私が応接間にお茶を持って案内に行こうとすると、ガチャンっと後ろで
珈琲陶器杯が割れた音がした。
「鏡子さんが二人…?」
敦君がぽつりと云った。
「え?」
振り向くと目を見開く私にそっくりな男と依頼人の名取さんがいた。
「おっはよー!」
勢い良くドアが開き、治が大分業務時刻に遅刻して入って来た。首に紐痕が残っている事から首を吊って来た事が分かった。あゝ雰囲気打ち壊しだ。
治が部屋に入って来た瞬間国木田くんの
跳躍両脚蹴りが炸裂。依頼人に当てない辺りが凄いと思う。
賢治くんがにこやかに応接間に二人を連れて行き、国木田くんは治を締め上げた。
私はお茶を持って応接間に向かった。
「初めまして、この件担当になりました。夏目鏡子です」
じいっと食い入るように私を見る名取さんと兄さん…真逆兄さんが来るとは思って無かった…
「おい、お前、鏡子の兄だろ」
最中が喋った。最中は兄さんの手の中にいる大きな猫を睨み云った。
「貴様、斑だろう?貴様程の者がいて助けを乞うのか?」
「そ言う貴様は坑夫か…随分と小さな姿だな」
「やっ、やっぱり鏡子なんだな…!久しぶり、覚えてるか?」
兄さんは少し緊張したように云った。
「えゝお久しぶりです兄さん」
応接間の扉がガチャりと開き、治が入って来た。
「事件に関する書類持って来たよ。今日も可愛いね鏡子もし良かったら一緒に心中でも」
「しない」
「そう」
じゃあ、と応接間から出て行った治を横目に事件の聞き込みを始める。
「名取さんでしたよね、祓い屋の目線から事件の事を教えて貰っても?」
「ちょ、ちょっと待って下さい…」
まぁそうだろうな。普通は。担当社員が実は連れの生き別れの双子の妹で其の妹がいきなり入って来た男に心中持ち掛けられたらそうなるよ。
「鏡子ちゃん」
扉が開きそろりと扉から入って来た谷崎兄妹。どうやら潤くんが一緒にやってくれるらしい。ナオミちゃんは潤くんに着いてきた。
「…では名取さん、改めて事件の事を教えて貰っても?」
名取さんは一度目を伏せて重々しく口を開いた。
「最初の被害者は、とても真面目な方でした。祓い屋の会合には絶対に顔を出し、周りとの付き合いも良好で……彼はとある妖を祓いに行った1週間後、行方不明になってしまったのです。それから彼が祓った筈の妖がまた暴れる様になって」
「其の被害者の名前は水島寒月ですか?」
「何でそれを…!?」
「矢っ張り…」
「何か判ったンですか?」
「判ったよ。この事件、妖の他に関わっているものがある…被害者の水島寒月はもう亡くなってる。死因は窒息死。右眼の眼球が無い状態で発見されてる」
兄さんと名取さんは表情を硬くした。
「妖か……ナオミ、矢っ張り危険だ、この件に着いてくるのは止めた方がいい」
私の隣に座っている潤くんはナオミちゃんに云った。ナオミちゃんは目を釣り上げてムッとした表情で云う。
「嫌ですわ!!ナオミは兄様と一緒に居たいんですの!!」
「ナオミ!!」
「何と云おうがナオミは兄様と一緒に行きます!!何でも聞いてくれると云ったじゃない!!約束を破る兄様なんかこうしてやる!」
「き、昨日のアレはお前がってナオミ、ちょっと待って、依頼人さんいるからナオミ、?ナオミィイイ!!」
ナオミちゃんは潤くんの服の中に手を侵入させて_______この話はもう止めよう。
「では事件が解決するまで私達は名取さんの護衛をするんですね」
「はい」
「名取さん、妖を祓いに行くんですよね…?」
「巻き込んでしまって済まないね夏目」
「ふん、全くだ」
兄さんはどう云う経緯で祓い屋である名取さんと知り合ったんだろう……真逆兄さんも祓い屋だったりして?
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side-Monaca-
「おい、鏡子の兄」
我輩は鏡子の兄、友人帳を持っている方の夏目にひっそりと声をかけた。
「なんだ?えっと…」
「最中だ。真名は坑夫と云うが…まあ気軽に最中と呼べ」
「じゃあ最中、何の用だ?」
「友人帳にある我輩の名前について…だ」
ピクっと友人帳の方の夏目…兄方が反応した。
「我輩は夏目レイコに名前を差し出した。鏡子と初めてあった時レイコが死んだと知った…ここからが本題じゃ、名前は返さんでいい」
「何?!」
声がでかい!と私は尻尾で兄方の顔を殴った。
「保険じゃ保険。貴様は鏡子を大切に思っているのだろう?もし我輩が鏡子を傷つけた時何時でも我輩を殺せる。貴様の為ではない。鏡子の為じゃ。」
「…判った。名前はまだ預かったままでいいと云うことだな?」
「あゝ」
斑も面倒な奴を持ったものだな…否、我輩も同じか…
我輩達は名取とか云う祓い屋の車に乗った。
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