仗助といちゃいちゃするだけの話






「う〜! 仗助くーん、ちゅーしてェ、ちゅう〜!」
「ハイハイ、チューっすね。ちゅー。」
「えへへ〜、うれしーっ!」
「嬉しいだけぇ?」
「好きー! 大好き!」
「俺も好きっすよ〜!」

仗助〜ちゅきちゅき〜!と素晴らしくご機嫌の良いなまえさんに自然と頬が緩む。
俺んちの、俺の部屋。胡坐かいてテレビゲームに向き合う俺と、対面する形でコアラのように抱きついてくるなまえさん。なまえさんの全体重を支えてる俺の足は完全に痺れていたけど「降りて」なんて言えねーし、ぬくもりが離れていくのもさびしい。悩んだ末に後ろに倒れることにした。


「ぎゃっ! いきなり寝転ぶな!」
「チューするから怒らないでなまえさん。はい、ちゅうー。」
「んちゅう〜!」

ぷんぷん怒ってる(フリ)なまえさんをチューで宥める。「仗助、好きよ。」といつもの調子に戻ったなまえさんがもう一度、俺の唇に唇を重ねた。

なまえさんは鉄仮面だ。初めて俺がなまえさんを見た時も、まるで仮面が張り付いたままのような…いや、顔そのものが冷たい仮面のように見えた。なまえさんは俺より二つ上の先輩だ。みょうじなまえは笑わない、などという噂もあったし、実際、クラスメートもなまえさんが笑った顔を一度も見たことがないと言う。他人によそよそしいわけでもない、完全に他者と壁を作り関わることを拒絶しているようだった。
それでも俺はなまえさんと付き合うようになった。紆余曲折を経ながら、晴れて恋人同士と言うわけだ。こうやって甘えてくるのも俺の前だけ。俺と完全に二人きりにならないと見れないなまえさんの一面。外に出るとまた仮面に戻ってしまう。それでも、俺と居る時は幾分か表情が柔らかくなるのだが、それがまた良い。俺だけの特別である証なのだから。

今だって、こんなに綺麗に微笑んでいるし、俺だけを映す瞳からはちゃんと好きだと伝わってくる。なまえさんは俺だけのなまえさんだって、そんな気になってしまう。きっともう俺はなまえさんだけの俺だ。


「もう。何考えてるの?」
「ん〜? なまえさんのこと〜。」
「ええーほんとー? じゃあもう一回チューして。」
「お願いされなくたって何回でもしますよォ。」
「きゃ〜仗助くんったらキス魔だぁ。」
「なまえさんにだけね。」
「うれし。がぶがぶしちゃお。」
「イデッ! 鼻の先っちょ噛んじゃダメっす。」
「やだ、脇腹こしょこしょするのヤメテ〜!」

なまえさん、好きだ。って言うと「私もよ、仗助。」と鼻の頭にキスされた。








20160810

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