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「ちょっと、にーちゃ〜?」
「うん? なんだい?」
「にーちゃってば、まーた女の子に話し掛けてたでしょ〜。しかも二人!」
「んふふ。まあね」
「もー。可愛い子見つけたらすーぐ声掛けちゃうんだから〜。ちゃんと仕事して! 仕事!」
「本音は?」
「俺も居るときにしろっ!」
「あっははは」
ふかふかとしたソファにもたれ、足を組むジェントルマン。
彼はカイゼル髭を弄りながら、横できゃーきゃーと抗議をする小さな相棒の頭をぽんぽんと撫でた。
「それよりも……」
「んな?」
小部屋の窓に近寄り、外を覗いた。六階にあるこの小部屋は船の中央デッキに面しており、船半分の外観が一望できた。
オレンジ色のライトに照らされて、夜の船上プールがきらきらと乱反射している。
終日解放しているというプールには今、誰も居ない。
誰も、居ない。
そんな景色を見ながらカイゼル髭の男は、にやりと笑った。
「どこからか、鼠が入り込んでしまったようだね」
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第二章 了