第三章(7/7)


***

夜の風を受け、チルットの羽毛がひとひら、宙を舞った。
月は暗く、しかし星はよく見える。風も吹かず、波は穏やか。
最良のコンディションだ。

「行けるかい? 絆優嬢」

離陸体制に入るチルットーーーー絆優の横で、兵太が声を掛ける。

「はい……行きます!」

絆優が静かに、羽根を広げた。
彼女の頭には、先程探していたヘッドライト付きのヘルメット、そして首にもペンダント型の懐中電灯を装備している。……が、それはまだ点灯させていない。ロケット団に見つからない為の、防衛策だった。
そしてもう一つ、身体に掛けているのは小さな布の鞄。そこには地図とコンパス、そして大切な『アレ』――――『ゆののトレーナーカード』が入っていた。

何の前触れもなく、チルットはその身を海へと投げた。
離陸のタイミングは絆優自身で行うと、あらかじめ決めていた。
海面すれすれまで降下し、そのまま低空で飛行して行く。
同じ時刻、リョウの手持ちポケモン、昴はゆのの宿泊部屋のバルコニーで、巨大な電気玉を発生させていた。
それは絆優が振り向いた時に見える位置にあり、暗闇の中を飛行をするための目印であった。
低空で飛行する絆優は一度振り返り、その光を確認する。
そして空を見上げた。
先に見えるは、北斗七星。あれが、目印。

「……」

絆優は静かに、息を呑んだ。
目指すは大陸。イッシュの街、ヒウンシティ。


***

第三章 了


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