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船内の非常用出口を飛び出したコラッタが三匹、屋外のスタッフ専用通路に姿を現した。
深い闇の中、そのうちの二匹が人の形へと変わり、すぐにその階段を下り始めた。
人の姿となった者……新と陽は、暗闇の中でもぴょんぴょんと跳ねるように階段を駆け下りていく。フライゴンの超音波の力、そしてゾロアークの夜目が効くからこそ成せる技だった。
「早くアレが見付かって、良かったね!」
新が嬉しそうに話し掛ける。
それは陽、そして腕の中に抱えた、コラッタになっている兵太に向けたものだった。ウォーグルである兵太は鳥目の為、暗闇での移動は厳禁なのだ。
「ああ、これだけ早く見付かったんだ。……早く、早く助けてやらねえと」
陽が、神妙な面持ちで呟いた。
「だいじょーぶだよ、陽! おじいさんも言ってたでしょ。悪い奴は、絶対に罰を受けるべきなんだって!」
「……。……」
「それに!」
「……それに?」
「役に立ちそうなモノをもう一個、見つけたでしょ!」
「……ああ。そうだな」
そう返事をして、陽は手元の紙を眺めた。
ぼろぼろになって千切れてしまった、メモ用紙の様だった。
そこにはこう記されていた。
『十八時半:立食会参加トレーナーのポケモン回収、
十九時:立食会不参加トレーナー及び船員の薬効き始め(ポケモンとカード回収)、
十九時半:立食会参加トレーナー薬効き始め、
二十時:トレーナーカード回収とまとめ作業、
二十一時:ツッカ様の船横付け、
二十二時半:撤収、爆破』
「もしこれが本当なら、さっきの揺れは……」
「船の横付けだね!」
陽の呟きに、新が返す。
このメモ用紙は、『アレ』を探している最中、兵太が偶然見つけたものだ。恐らく、ロケット団員の一人がうっかり落としてしまったのだろう。
薬の効き始めやトレーナーカードの回収など、新と陽が見たあの醜行は、どうやら立食会に参加していないトレーナーや船員達も被害に遭っている様だ。
先程起こった大きな揺れは、この船の横付けによる衝撃だろう。これは兵太の憶測でしかないが、彼等が船をもう一つ用意した理由はロケット団の要因追加と、盗んだトレーナーカードやポケモンの運搬に用いる為なのだろう。そして。
「爆破って……! 何なんだよ、くそ!」
陽は手元の用紙を握り締め、悪態を吐いた。
時刻はすでに二十一時十五分を指している。あと一時間十五分後には、この爆破とやらが開始してしまうのだ。
陽、そして新は船尾二階まで辿り着き、身を翻して明るい船内へ入る。
兵太が新の腕から床へ飛び下り、コラッタから元の姿に戻った。
そして、低い声で言う。
「陽、落ち着け」
新も兵太に続き、陽に声を掛けた。
「そうだよ陽……! 怒っても、何も出来ない……。とにかく、今は急がなくちゃ……!」
「……っああ! もう! 分かったよ!」
苛立ちを隠し切れない陽は、その怒りを発散させるかの様に廊下を走り抜けた。
新、兵太もそれに続く。
「陽……」
新自身も、決してゆのが心配じゃない訳ではない。倒れているゆのの姿が、今でも目に焼き付いて離れない。
そう。離れないのだ。
記憶から、離れられない。
離れないでと、せがんでいる。
誰から離れたくないのか。
誰と一緒に居たかったのか。
誰を守りたかったのか。
そう、それは。
それは幼い頃の、あの記憶のようで。
「大丈夫だよ」
「え?」
「うん?」
走りながら発せられた新の言葉に、陽と兵太が振り返る。
そこには。
「絶対に、助けるから」
そこには今まで見たことのない表情をした、新がいた。
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