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暗闇の中、大きな電気玉だけが煌々と辺りを照らす、九階、バルコニー。
巨大な電気玉を作り続ける昴の体力は、酷く消耗していた。
夜間対応の双眼鏡で絆優の行方を見ていたリョウは、昴の方へ目を向けた。
「昴、もういいよ」
「ピッカァ……」
電気玉を消した昴はぺたりとその場に座り込み、疲弊した身体を休ませた。
「昴、お疲れ様」
リョウはヘッドライト付きのヘルメットの明かりを点けると、小さな相棒の背中をさすった。
そんなリョウに対して、昴は片手を振って軽くあしらう。
どうにも弱音を吐かないのが、このピカチュウの悪い癖だ。
「絆優ちゃん、見えなくなったよ」
絆優の持っているライトの光は先刻、微かに見え辛くなった後やがて見えなくなった。
夜間飛行は一先ず、順調に進んでいるとみて良いだろう。
兵太の言う通り、この船に乗っているロケット団の警備はザルの様だ。
「あとは上手くいくことを祈ろう」
「ピカピカ」
昴がこくこくと頷き、夜空を見上げた。
たった一匹で海上を飛ぶ、小さなチルットの無事を祈る。
その時である。
「ピカッ!?」
「うわあ!?」
突風。しかしただの風ではない。
重く湿気った、やけに生臭い風がリョウと昴を襲った。
そして。
「ピ……ッ!」
「えっ、昴!?」
怯んだ昴の足場から現れた大きな影。
その影から現れた黒い塊に、小さなピカチュウは成す術もなく吹き飛ばされた。
そしてそれと同時に、リョウが被っていたヘッドライト付きのヘルメットの明かりが消えた。
「ええっ!?」
突如として訪れた暗闇。
混乱するリョウの耳に、聞き慣れない声が聞こえた。
「まずは一組目の鼠、確保ですね」
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