第四章(7/13)


***

新、そして陽は船上の見張りに警戒しつつ、目的の場所を目指して進んでいた。
暗い甲板の上を、二匹の影が駆け抜ける。

「……」

「……」

壁と木箱の陰に身を潜めて、辺りを伺う。
反対側の甲板に数人、ロケット団の見張りがうろついている。
そのすぐ傍には先程横付けされたであろう、もう一隻の黒い大型船――――『ツッカ様の船』が在った。すでに、互いの船を繋げる船橋も掛けられている。
この辺りで充分だろう。
新が陽へ目を合わせると、陽もこくりと頷いた。
ふう、と新は大きく息を吐いた。静かな場所にずっと居るのは、苦手だった。

「……」

そんな新を見ながら、月が明るくない日で良かったと、陽は思った。
月明かりで影が出来てしまうと自分と相手の位置は今以上に気にしなければならず、それだけ時間も掛かってしまう。
新ほどでは無いにしろ、こんな緊張状態が長く続くなんてまっぴらだ。
そう思いながら、陽は真っ暗な空を見上げた。
……兵太も今頃、目的の場所に着いただろうか。

「……」

見上げた陽につられて、新も空を見上げた。
しかしそこには、先の見えない暗闇ばかり。
一体何を見ているんだと疑問に思い、再び陽の表情を伺うと、そこには未だ夜空を茫洋と見つめる陽の姿があった。
ふと、新は思う。
こんな表情をするポケモンをもう一匹、自分は知っていると。

「……これが終わったらさ」

「……え?」

ひそひそと、新が陽に耳打ちする。
何事かと思いつつ、陽は耳を寄せる。

「この、よく分かんない事件が終わったらさ……陽、ヒウンシティにおいでよ」

「ええ?」

急に何を言い出すかと思えば、である。
怪訝そうな表情をする陽に、新は嬉しそうに言った。

「会わせたい、おれの仲間がいるんだ。陽と同じ赤い髪をしていて、陽と同じくらい、強くて、面白くて、あと……あとね」

新はそこで言葉を切って、ぐい、と陽の正面を見つめた。
目をしばたかせる陽を他所に、新は確信を得たように頷くと、嬉しそうに口を開いた。

「陽と同じ、目をしてる」

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