メチャクチャ頭が痛い。ついでに言うと全身も怠い。風邪かと言われるとそうでもない。最近急に寒くなったせいか、雨が続いているからか‥‥気候に身体が付いて行かないなんて‥‥昔はそんな事なかったのに。昔って言っても小学生とかの頃だけど。冷えピタあったっけ。
「‥‥孤独だ」
アイフォンを手に取る。緑色のアイコンをタップしてショートメールを開く。「芹沢くん、なんか体調悪い」と打ち込んで送信する。この間約30秒。体調悪いから何なんだよ‥‥って自分でツッコミを入れたくなるニュアンスのメールを送ってしまったことに暫し後悔した。だって頭も痛いし身体も怠いし冷えピタもないし誰もいないし寂しいし‥‥‥‥キモッ。でも寂しいモンは寂しい。若干開き直っていると、芹沢くんにしては早めの返事が来た。「風邪引いたの?何か欲しいものある?」簡易的なメールだ。学校帰りにお見舞いでも来てくれるのかな。‥‥でもその頃には寝ちゃってそう。お言葉に甘えて「冷えピタと飲み物が欲しいかな」と送ってみる。そのあとに「でも学校終わる頃には寝てると思うから、気にしないでいいよ」と付け足しておく。いいやもう、今日は1人で耐え忍ぼう。大人だし。布団を肩まで掛けて、なんとなくアプリのゲームをやってみる。その内眠くなるだろう、と思っていたら20分程でもう瞼が重くなってきた。ここ最近寝不足だったからちょうどいいし、今日は死んだように寝てよう。そう思って瞼を閉じた瞬間、電話の着信音が鳴った。ビクッとして目を開いてアイフォンの画面を見ると「芹沢克也」の四文字が浮かんでいる。

「も、もしもし?」
「あっ良かった!起きてた?俺、いま家の前にいるんだけど、色々買ってきたから‥‥」
「えっ学校は!?」
「今日休みだよ、日曜日じゃん」
「‥‥‥‥あ」

布団から出て玄関のドアを開けると、芹沢くんがデカい袋を両手に下げて立っていた。「冷えピタ買ってきたよ」と言っていたけれど、絶対冷えピタだけのサイズじゃない。「買い物袋、大きくない?」と言うと「あとポカリ半ダースと頭痛薬と一応風邪薬と、薬飲む用のゼリーとのど飴と‥‥」と終わりが見えなさそうな説明をしてくれたので「とりあえず上がってよ」と家の中へ入ってもらった。

「寝てたの?」
「うん」
「お家の人は?」
「夜中までいない」
「そっか‥‥心細いよね」
「‥‥子供扱いし過ぎじゃない?」
「とりあえず寝てなよ。俺も昔体調良くないことが多くてさ、気持ち的な所からだったんだろうけど‥‥とりあえず寝るのが一番だよ」
「‥‥さっき寝れそうだったんだけど‥‥」
「えっ!うそ、ごめん‥‥あっ、アイス食べる?」
「食べる」
「寝るまで一緒にいるから、安心してていいよ。泥棒とか来ても追い返すし」
「‥‥?ありがとう」

そんなセコム的な安心なんだ‥‥。俺がいるから寂しくないよ、とかそういうのじゃないんだ‥‥。

その後はアイスを食べて芹沢くんと他愛もない話をしていたら、いつの間にはぐっすり眠っていた。夢か現実か分からないけれど、右手には芹沢くんの硬い手を握っていた感触が残っていた。でも起きたら芹沢くんは勿論帰っていて、もしかして全部夢?と思ったけど冷蔵庫には半ダースのポカリが詰まってた。
‥‥心なしかちょっとすっきりした気がする。明日は芹沢くんに差し入れでも買って行こう。あと、簡単なやつなら宿題も教えてあげよう。


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