近所のコンビニへ行った帰り道、芹沢さんを見付けたのでキスをした。芹沢さんは生まれて初めて女の人にキスをされた様な顔をしていたので、ちょっと嬉しかった。動揺が顔に全部出ていて、目線が前後左右あっちこっちに動いたと思うと「間違えちゃったの?」と言った。何言ってるんだろうこの人。「嫌だった?」と聞いてみたら「あ、いや、」とモゴモゴし始めた。そんな芹沢さんがたまらなく好きだったので腕を回して抱き締めてみる。実際は抱き締めたという程包容出来ていたわけじゃなく、しがみついているみたいな感じだった。ワイシャツに顔を寄せると芹沢さんの家で使っているであろう洗剤の匂いがする。芹沢さんの匂いだ。

「なんか嫌なことでもあったの?」
そういうのじゃないです
「あ、俺、金はないけど‥‥」
言われなくても分かってるよ、金目当てだったら芹沢さんには行きません
「え‥‥じゃあ‥‥なに‥‥?」
なにって‥‥何だと思っているんだろう‥‥

「したかったから」

芹沢さんにキスをしたかったんだよ、という事を簡潔に伝えた。髭が伸びかけている頬に触れてみるとチクチクした。肌がちょっと荒ているから、ちゃんとシェービング後は保湿した方がいいよって今度教えてあげよう。
芹沢さんはその後もなにか言葉を発することがなかったので「お疲れ様です」と言ってた帰った。家で1人コンビニで買ったあんまんを食べてベッドで寝そべっていたらいつの間にか寝ていた。次の日職場に行ったら霊幻さんに「お前‥‥もしかして芹沢と付き合ってんの?」と聞かれて芹沢さんからは「××ちゃん‥‥霊幻さんと付き合ってるんじゃなかったの?」と聞かれた。どっちも違うわ。ばかじゃん。わたしは芹沢克也さんがちょっと好きなだけだ。その芹沢克也さんはわたしの事は何とも思ってない。それだけだ。これからも多分ずっとそれだけだ。バカな男ども。


ALICE+