「君の事は別に好きじゃない、というか、元々好きじゃなかった」


背徳感というのはいわゆる倫理的道理に背いているという事で、それによって後ろめたさや罪悪感が生じる。こんなの産まれて初めてかも知れない。嘘だよ、大好きだよ。世界で1番好きだよ。それが例え思春期の一時的な物であったとしても君が大好きだよ。


「聞こえなかった?その面見てるだけでムカムカして来るんだよね。」


学校の不良どもを冤罪に陥れた事なんて比べ物にならないくらい!今!僕は人生のどんな時よりも後ろめたい気持ちで一杯だよ!!分かる?ねえ。それでも僕は喋るのを止めない。なぜなら僕には目標がある。兄さんに近付きたい、他の奴に負けたくない。今、ここが僕のスタート地点なんだ。勉強だってスポーツだって人間関係だって同じだ。努力して嫌な事を乗り越えてやっと実力が身に付くんだ、世界はそういう風にできている。超能力だって同じだ。


「‥‥なにその顔。そんな人だったんだ、みたいな。きみが勝手に都合良く僕を解釈して思い込んでただけでしょ?‥‥僕が誰って?‥‥影山律だけど。きみの彼氏、さっきまではね」


ずっとずっとずっと大切にしようと思っていたし大切にしていた。手だって最近握れたばかりだし、キスなんてまだ考えられない。宝石のように輝いていて、シャボン玉くらいの強度で、神様みたいに
神聖なきみ。そんなきみをこれから犯します。神様ごめんなさい。あれ、神様はきみだっけ??

「い、いたい‥‥‥‥律くん、っ‥‥‥‥う‥‥」
「‥‥‥‥うるさいよ、静かにしてて‥‥」
「ひどい、ひどい、こんな、‥‥‥‥こんな‥‥‥‥」
「‥‥次泣いたら口に布詰めて顔殴るよ」


そう言ったらきみはもう何も言わなくなった。顔を覆って声を殺して、たまにしゃくりあげる時に肩が跳ねていた。腰を動かすと、たまにくぐもった声が口元を抑えた制服の袖口から漏れた。僕の顔からは、汗なのか涙なのか分からない水分がポタポタ垂れてきみの制服を濡らした。喪失感の中に高揚感と快感と罪悪感と背徳感と、いろんな感情がごちゃまぜになって死ぬかと思った。口の中で小さくごめんねと呟いてみたけれど、きみに聞こえたかは分からなかった。きみのプライドも尊厳も、僕に向けてくれた愛情も踏みにじった挙句、きみをレイプしてしまうようなこんな僕だけど、きみが大好きだよ。大好きなんだよ。分かるかい?



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