「霊幻先生、聞いてください」と言って目の前の女子大生は真剣な面持ちで俺を見た。初めて会ったのは丁度一週間前くらいの事で、なんでも一人暮らしの部屋でラップ音やポルターガイスト現象があるから調査して欲しいとのことだった。モブはまだ学校にいる時間だったので芹沢を引き連れていっちょやってやるか、と思った所で事務所の扉が開き、別の客が飛び入りでやって来た。最近は暇で稼ぎも少なかったので来るもの拒まず精神だった俺は、その女子大生の件を芹沢に任せる事にした。俺が行っても良かったけど、事務所に芹沢と客だけ残していくのも不安だったからな。「芹沢、行って来い」と言ったら「俺、こんな若い女の子と歩いてて職質とかされませんか‥‥?」と不安そうだったので「大丈夫だよ、二十歳超えてれば何も違法じゃねーんだから堂々としてろ」と言った。客商売に慣れる為に、たまに厳しくする事も必要だろ。それに女子大生の家にお邪魔できるんだから役得だろ、よかったな。そんな事を考えながら見送った。

しばらくしてから事務所に戻って来た芹沢に「どうだった?」と聞いてみたところ、「悪霊でしたね、除霊しときました。あと携帯持ってないって言ったら、凄いビックリされましたよ。ははは」と鼻の頭を擦りながら笑っていた。‥‥ん?どういう経緯で携帯の話題になったんだ‥‥?と思ったものの、その時は大して気に止めなかった。今になって分かった事だが、この女子大生が芹沢の連絡先を聞いたのだ。なぜ分かったのかと言うと、「実は‥‥この前芹沢さんに助けて頂いて‥‥その、もっと仲良くなれたらなって思ったんです‥‥それで連絡先聞いたんですけど、携帯持ってないって言われて‥‥本当ですか?」と目の前の女子大生本人の口から聞いたからだ。流石の俺もすぐに言葉が出て来ず、「あ、仕事用の携帯、今度持たせときます」とつっかえながらやっと返した。芹沢、お前、俺という社長を差し置いて何してんだよ。



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